よると市場第一部で２名以上の独立社外取締役を選出する上場企業の比率は97％であり、 CGコード導入前の2014年21.5％と導入直後の 2016年79.7％から比較すると大幅に増加していることが分かる。さらに2021年６月、二度目の改訂CGコードでは、多様性、特に「女性社外取締役」の役割に大きく注目がされている。東証（2021）ガバナンス白書によると、2014年には159名であった女性社外取締役は、2021年には1,835名１．はじめに本稿では日本の上場企業における女性社外取締役の選任と企業経営の関係について、取締役会およびステイクホルダーへ与える影響について考察を行う。研究の背景としては、2015年６月に導入されたコーポレートガバナンス・コード（以下、 CGコード）を嚆矢として、日本企業では社外取締役の導入が進んだ。2021年８月に東京証券取引所（以下、東証）が発表したデータにABSTRACT This paper discusses how governance issues can impact the value of Japanese companies. Japan’s Corporate Governance Code was first introduced in 2015, and has since been revised twice since then. The latest revision emphasizes gender and other types of diversity, as well as the importance of outside directors. The number of female outside directors increased from 159 in 2014 to 1,835 in 2021. How did the addition of female outside directors improve corporate value and management? Previous research on the issue finds both positive and negative aspects of the appointment of female directors on corporate value. This is due to its short history and small number of female directors. This paper interviewed nine companies listed on the Tokyo Stock Exchange from three industries and analyzed them using a qualitative method known as SCAT. I conclude that the introduction of female outside directors had a positive effect on the corporate value. キーワードコーポレートガバナンス・コード　女性社外取締役　SCAT 分析　企業価値向上日本における女性社外取締役が企業経営に与える影響に関する研究 ― 日本の上場企業のステイクホルダーを中心に ― Research on the effect of female outside directors on corporate management in Japan － Focusing on stakeholders of Japanese listed companies －法政大学大学院政策創造研究科　修士課程福　田　智　美 Graduate School of Regional Policy Design, Hosei University Tomomi Fukuta ‒ 85 ‒ 日本経営倫理学会誌第29号（２０２２年）論文となり、取締役全体に占める女性社外取締役の比率は5.9％まで上昇した。このようにCGコードにおける社外取締役選任の推奨と、内閣府男女共同参画局（2015）「男女共同参画基本計画」による女性活躍推進の後押しがあり、女性社外取締役の人数は増加したことが分かる。その結果、女性社外取締役が取締役会に加わることにより、取締役会および企業のステイクホルダーにどのような影響が表れているのか関心が寄せられるようになった。東証や政府の方針に従い、女性取締役を増やせば良いということではなく、多様性の推進が企業経営に与える影響について問われている。このような日本企業の流れに問題意識を持ち、本稿では考察を行っていく。本稿は、第１章から第６章までの全６章で構成する。第１章では、研究の背景と問題意識を述べる。第２章では現状分析として、日本市場におけるCGコードの現状と歴史的背景、女性活躍推進の歴史と現状を示す。第３章では、主な先行研究について「女性役員比率と企業価値向上」の相関を明らかにした議論を三つの観点からレビューを行い、先行研究の限界からリサーチ・クエスチョン（以下、RQ）を設定する。第４章では本稿の研究方法について述べる。その上で「女性活躍推進」に積極的な企業へのインタビュー調査を行い、インタビュー項目や使用データを確認する。分析方法として大谷（2008）SCAT分析を提示し、SCAT分析を使用する妥当性を確認する。第５章ではインタビュー調査の分析結果をRQごとに示し、分析結果をもとに考察を行う。第６章では、日本の上場企業における女性社外取締役が企業経営に与える影響を、企業の取締役会、ステイクホルダーの側面から分析した研究成果を示すとともに、本稿のまとめと限界、今後の研究課題を明らかにする。本稿で用いる「女性活躍推進に積極的」の定義を示す。厚生労働省（2016）「女性活躍推進法」は、労働者数301人以上の事業主に女性が活躍できる行動計画を策定・公表するよう義務付けた。各省庁および東証は図表１－１のような認定を企業に付与し「女性活躍推進」企業の見える化を行った。本稿ではこれらの認定を受けている企業を「女性活躍推進に積極的」と定義する。図表１－１　「女性活躍推進」認定の一覧認定の名前認定機関対象概要なでしこ銘柄経済産業省東京証券取引所東京証券取引所上場約3600社女性活躍推進に優れた上場企業（２段階評価：なでしこ＞準なでしこ）くるみんマーク厚生労働省一般事業主行動計画を策定した企業子育てサポート企業（２段階評価：プラチナくるみん＞くるみん）えるぼし認定制度厚生労働省常時雇用者が301名以上の企業女性活躍推進法に基づく認定制度（３段階評価：３＞２＞１）出所：厚生労働省、経済産業省、東証HPより筆者作成 ‒ 86 ‒ ２．現状分析２．１　日本市場におけるコーポレートガバナンス・コードの現状と歴史的背景日本におけるCGの流れとして2014年２月に金融庁から日本版スチュワードシップ・コードが公表され、機関投資家が受託者責任を果たす為の原則が明らかとなった。そして同８月、経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ～企業と投資家の望ましい関係構築～」プロジェクト（以下、伊藤レポート）が公表され、企業が投資家との対話を通じて持続的成長に向けた資金を獲得し、企業価値を高めていくための提言がなされた。そして2015年５月改正「会社法」では、社外取締役を選任していない上場会社は、その理由を定時株主総会において報告しなければならないとされた。さらに同年６月には金融庁・東証から日本版CGコードが導入され、日本のCGの枠組みは、2014年から2015年にかけて大きな変革がなされたといえよう。そのような流れを受け、日本企業では社外取締役を選任する動きが急増した。さらに2021 年６月に二度目の改訂が公表されたCGコードでは多様性、特に「女性社外取締役」の役割に焦点が当てられた。生命保険協会（2020）によると、企業の取締役会実効性向上に対して「ジェンダーバランスや多様性の確保」を多くの投資家が求めているという報告もある。２．２　日本における女性活躍推進の歴史と現状女性社外取締役は急増したが、一方で内閣府男女共同参画局（2015）「男女共同参画基本計画」で目標とした2020年までに上場企業役員に占める女性の割合10％および女性管理職比率30％との乖離は依然として大きい。資産運用会社りそなアセットマネジメントは 2023年からプライム市場上場企業に対して、女性役員が不在の場合は代表取締役に反対票を投じるとした。議決権行使助言会社であるアメリカのグラス・ルイス社は、2022年東証市場区分再編後のプライム市場において、取締役会に対し女性役員比率が10％以下である場合、2023年から代表取締役選任の際、反対票を推奨すると公表した。同じような動きは、他の運用会社や議決権行使助言会社でも起きている。このように、女性社外取締役の需要は益々高まるが、一方で日本は歴史的背景からも諸外国と比較し、女性活躍推進は遅れている。図表２－１に女性活躍推進の歴史と、CGコードの歴史を示す。日本では1985年に「男女雇用機会均等法」が制定されたが、アメリカでは日本よりも20年早い1963年に同一の労働に従事する男女に対して同一の賃金が保証される「同一賃金法」が制定されている。このように日本の法制度の遅れから女性活躍推進を支える制度がまだ浸透しきっていないと考えられる。また、内閣府男女共同参画局（2021）世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2021」が示すジェンダーギャップ指数では（図表２－２）日本は153ケ国中121位（0.656）であり、イギリス23位（0.775）、アメリカ30位（0.763）と比較し、先進国の中でも低いレベルである。女性活躍推進の歴史的背景と現状から、日本の「女性活躍推進」がまだ道半ばであることが明らかである。３．先行研究３．１　女性役員比率と企業価値において「有意な関係がある」とする研究一ノ宮（2011）は、量的調査で、東証一部および同二部上場企業2,341社（金融・保険を除く）を対象に、企業規模をコントロールした上で、2007年度の女性役員比率と2006年度の ‒ 87 ‒ インド、オーストラリア、アメリカ、イギリス、ドイツの上場企業の女性取締役とROE、 ROAとの関係を示した。調査方法は女性役員選任（有無）とROE、ROAの平均値の差による両側検定である。結果は図表３－１の通り。女性取締役選任（有無）とROE、ROAの関係は、強制力を伴うクォーター制が導入されているインド、ドイツ、フランスではパフォーマンスの差異はなかったが、一方でオーストラリア、イギリス、アメリカのように、企業の自主的な行動（30％クラブなど）で女性取締役の積極的な選任を進めている国では差が確認できた。法制度になってしまうと企業経営よりも女性を選任することが優先されてしまう可能性について分析が必要であると述べている。ROS、ROA、ROE、期末株価との関係を平均値の差の検定を行った。その結果ROEを除き、 ROS、ROA、期末株価との間に正の相関関係が確認された。しかし、アメリカやヨーロッパと比較し、日本のジェンダーを含むダイバーシティ経営は歴史が浅いのでデータの蓄積の不十分な点を指摘している。大野（2020）は、量的調査で、東証一部上場、従業員1,000人以上、女性役員比率30％以上の３条件を満たす企業を抽出し、2014年から2018年までの株価、ROEを分析した。分析の結果、女性役員比率が30％以上の企業の株価とROEは日経平均や東証大型株を大きくアウトパフォームしたが、サンプル数が少ないため記述的な比較であるとしている。伊藤（2018）は、量的調査で日本、韓国、図表２－１　CGの流れと女性活躍推進の歴史 1985 男女雇用機会均等法 1991 育児休業法 1999 男女共同参画社会基本法 2012 第二次安倍内閣発足 2014 日本版スチュワード・シップコード持続的成長への競争力とインセンティブ～企業と投資家の望ましい関係構築～（伊藤レポート） 2015 女性活躍加速のための重点方針2015策定第４次男女共同参画基本計画　閣議決定 2015 コーポレート・ガバナンスコード 2017 日本版スチュワード・シップコード（改訂） 2018 コーポレート・ガバナンスコード（改訂） 2019 女性活躍推進法、均等法、育児・介護休業法の改正 2020 日本版スチュワード・シップコード（再改訂） 2021 コーポレート・ガバナンスコード（再改訂） 2022 東京証券取引所　区分改編（５→３）　　出所：内閣府男女共同参画局、厚生労働省、東証HPより筆者作成図表２－２日本のジェンダーギャップスコア分野 2021年スコア 2020年スコア経済 0.604 0.598 政治 0.061 0.049 教育 0.983 0.983 健康 0.973 0.979 　　　　　　　　　　　　　出所：内閣府男女共同参画局（2021）より筆者作成 ‒ 88 ‒ とに女性取締役とROAの関係の分析を行った。その結果、女性取締役比率とROAの間には有意な関係はないとした。それは対象企業のほとんどが女性取締役の登用が１名であるため、たった１名が登用されても企業経営に大きな影響を与えることは難しいと結論づけている。松田（2020）は量的調査にて、取締役会におけるダイバーシティと投資の意思決定の影響および株価への影響について研究を行った。分析対象は東証全上場企業のうち、東証33業種の「化学」に属する売上高500億円以上の企業の100社を抽出した。検証の結果、女性社外取締役の存在は、企業業績（ROA）には影響を与えない一方で、株価評価との間には正の有意性がみられるとしたが、株式市場の評価が「女性取締役の有無」を形式的に見て反応している可能性を示した。 Marinova（2010）は量的調査にて、2007年のデータを用いてオランダの上場企業から186 社を、デンマークの上場企業から84社を、金融を除いて抽出をし、女性役員比率（有無）とTobin’s Qの間の相関関係を分析した。分析結果は、女性役員を登用している企業の方が Tobin’s Qが高いとしたが、企業の規模や業種などをコントロールすると有意な相関関係は見られないとした。IMF（2016）は量的調査で、2013年のヨーロッパ諸国の200万社以上のサンプリングから女性上級職とTobin‘s Q、ROAの関連性を指摘した。回帰分析により、３つの指標（純利益、税引前利益、総資産に対するEBIT）について、少なくとも女性２人以上のメンバーが上級職に就いている企業を抽出し、男性の上級管理職または取締役会メンバーのうちの１人を女性メンバーに置き換えることで企業のROAは上昇すると示した。３．２　女性役員比率と企業価値において「関係がない」「負」とする研究松本（2019）は、量的調査にて2007年から 2013年までのうちTOPIX500に含まれている企業でデータ入手が可能な236社を対象に二段階最小二乗法を用いて、女性取締役（社内・社外）とTobin’s Q、ROAの関係を検証した。その結果、女性取締役比率とTobin’s Q、ROAの関係は内生性をコントロールすると相関は消滅するとした。松本はメディア等で指摘されているような、女性取締役の選任と企業パフォーマンスにおける正の関係が見せかけの相関である可能性が高いと示唆している。宮崎（2017）は、量的調査にて、日本企業の124社のうち2009年から2015年のデータをも図表３－１　2015年度の女性取締役の「比率高」との財務パフォーマンス女性取締役比率（%）クォーター制導入ROE （FY） ROA （FY） 2013 2014 2015 2016 2017 2013 2014 2015 2016 2017 日本 2.8 〇〇〇〇韓国 2.3 インド 10.9 〇オーストラリア 13.7 〇〇〇アメリカ 12.6 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇イギリス 18.5 〇〇〇ドイツ 17.1 〇〇フランス 31.6 〇出所：伊藤（2018）をもとに筆者作成 ‒ 89 ‒ Adams and Ferreira（2009）は量的調査にてアメリカ企業を対象とした女性取締役比率と ROAとTobin’s Qの関係性をS&P500、S&P Mid CAP, S&P Small CAPの構成企業1,939社を対象に1996年から2003年にかけて操作変数を用いた固定効果モデルによって分析を行い、その結果、弱いながらも負の相関関係があるとした。３．３　女性役員の登用と企業価値の関係性を示す質的研究堀井（2008）は、質的調査として、2007年に「ダイバーシティ＆インクルージョン」の推進に２年以上取り組んでいる企業の管理職に対してアンケート調査を行った。その中で、「ダイバーシティ推進で企業業績は向上する」という質問に対して、平均7.6点/10点という高い数値の結果が出された。江川（2017）は、質的調査として、2017年に東証一部上場企業14社の役員もしくは取締役担当者、国内外の機関投資家などを対象にインタビュー調査を行った。14社の条件は女性の社外取締役を１名以上選任している企業を３業種から抽出した。江川の研究は主に社外取締役の役割と機能であるが、そのインタビュー調査の中で、女性社外取締役導入の影響として前向きの評価が多かったとしており、上場企業において、女性社外取締役の役割は視点の多様性、女性スタッフへの良い影響、多様性の向上を通じてガバナンスが改善されることなど明らかにした。３．４　先行研究のまとめと限界先行研究レビューより、女性取締役と企業価値の先行研究を資料１のようにまとめた。日本企業を対象にしたこのような先行研究は海外と比較すると少ないが、その原因は女性活躍推進の歴史がまだ浅く、女性取締役（社内・社外）の選任が活発に議論されるようになったのは、改訂CGコード（2018）以降であるため、それ以前の日本企業では、女性取締役を選任する企業は限定的であり、先行研究でも指摘されているように十分なデータが蓄積されていなかったことから量的調査では限界があるといえよう。さらに二度の改訂CGコードやプライム市場のような女性取締役選任の流れは日本企業にとって非常に新しく大きな変化であり、この調査を質的調査で行うことは、社会的にも学術的にも価値があると考えられる。質的調査について、サトウら（2019）はある出来事が起きる経緯や、その出来事の結果によってもたらされたことの「因果的成分」は量的研究が取り出してきたが、「偶有的成分＝非因果的成分」については、質的探究によって取り出すことで理解の幅が広がるのではないだろうか、と述べている。大谷（2019）は、量的測定からこぼれ落ちてしまうものを質的データで研究をする、として、すべてが量的に測定できるわけではなく、それゆえ、対象を「量」ではなく「質」において把握する試みがなされ得る、と述べている。質的研究の先行研究である江川（2017）は、女性社外取締役についてインタビュー調査は行っているものの、社外取締役の研究論文の一部である。本稿は女性社外取締役にテーマを絞ったインタビュー調査を行い、女性社外取締役と企業経営への影響について、これまでの質的研究では明らかになっていない取締役会とステイクホルダーに与える影響に焦点を当て分析を行うこととする。３．５　リサーチ・クエスチョン先行研究レビューおよび先行研究の限界から、以下に本稿におけるRQを二つ設定する。 RQ１：上場企業が女性社外取締役を選任する ‒ 90 ‒ 頻繁に使用しているのは、量的研究者が行っている量的データの分析とSCATによる質的データの分析には、ある種の親和性がある」と説明している。さらに大谷（2019）ではSCATと量的分析には二つの共通点を指摘している。一つ目は SCATの分析手続きの定式性と明示性である。 SCATはある程度定式的で明示的な分析手続きである「客観的な手続き」を行っている。それは分析の過程が可視化されて明示的に残るからである。そのため分析の妥当性確認のための省察を分析者に迫る機能も有している。量的研究者が質的なデータ分析の手続きに対してもつ「不可解」という思いをSCATは解消する。二つ目はSCATでは採取したデータを全部使うこと、いわば「全データ使用性」である。量的研究も採取したデータは基本的に全部を使用する。SCATではデータの恣意的な選別を行わない。そのため、SCATではデータの全体を見ながら分析を開始し、最後までそのデータ全体を見ていることになる。主観性をある程度排除し、すべてのデータを使用するという点において量的研究と親和性があるといえる。以上二つの視点から本稿でSCAT分析を使用することに妥当性があると考えられる。ことにより、取締役会においてどのような影響があらわれるのであろうか。 RQ２：上場企業は女性社外取締役の選任に対して、ステイクホルダー（従業員・株主、投資家）へ、どのような影響を期待しているのであろうか。４．インタビュー調査の手法の解説本稿では、質的調査としてインタビュー調査（シングルインタビュー、半構造化インタビューの形式）を行う。そのインタビューにより取得した逐語録をもとに、大谷（2008）によるSCAT分析による定性的手法を用いて分析を行う。図表４－１に示したように、SCATは逐語録化した音声データに対して明確な４つのステップを行う手法である。本稿でSCATを使用する妥当性を二つ示す。一つ目は少数サンプリングであること。日本の上場企業においては女性社外取締役の存在は限られているのでSCAT分析を用いる点において妥当性があると考える。二つ目として、量的研究法との親和性である。先行研究では女性役員比率と企業価値の関係性において、多くは量的調査が使われていた。SCATは量的調査が主流であった分野でも数多く使われる傾向にある。大谷（2019）によると「量的研究者がSCATを図表４－１　SCAT分析における４ステップ 6 役会とステイクホルダーに与える影響に焦点を当て分析を行うこととする。 33..55リリササーーチチ・・ククエエススチチョョンン先行研究レビューおよび先行研究の限界から、以下に本稿におけるRQ を二つ設定する。 RRQQ１１：上場企業が女性社外取締役を選任することにより、取締役会においてどのような影響があらわれるのであろうか。 RRQQ２２：上場企業は女性社外取締役の選任に対して、ステイクホルダー（従業員・株主、投資家）へ、どのような影響を期待しているのであろうか。 44.. イインンタタビビュューー調調査査のの手手法法のの解解説説本稿では、質的調査としてインタビュー調査（シングルインタビュー、半構造化インタビューの形式）を行う。そのインタビューにより取得した逐語録をもとに、大谷（ 2008）によるSCAT分析による定性的手法を用いて分析を行う。図表4-1 に示したように、SCAT は逐語録化した音声データに対して明確な4 つのステップを行う手法である。本稿でSCAT を使用する妥当性を二つ示す。一つ目は少数サンプリングであること。日本の上場企業においては女性社外取締役の存在は限られているのでSCAT 分析を用いる点において妥当性があると考える。二つ目として、量的研究法との親和性である。先行研究では女性役員比率と企業価値の関係性において、多くは量的調査が使われていた。 SCATは量的調査が主流であった分野でも数多く使われる傾向にある。大谷（2008）によると「量的研究者がSCAT を頻繁に使用しているのは、量的研究者が行っている量的データの分析とSCAT による質的データの分析には、ある種の親和性がある」と説明している。さらに大谷（ 2019）ではSCATと量的分析には二つの共通点を指摘している。一つ目はSCAT の分析手続きの定式性と明示性である。 SCATはある程度定式的で明示的な分析手続きである「客観的な手続き」を行っている。それは分析の過程が可視化されて明示的に残るからである。そのため分析の妥当性確認のための省察を分析者に迫る機能も有している。量的研究者が質的なデータ分析の手続きに対してもつ「不可解」という思いを SCATは解消する。二つ目は SCATでは採取したデータを全部使うこと、いわば「全データ使用性」である。量的研究も採取したデータは基本的に全部を使用する。 SCATではデータの恣意的な選別を行わない。そのため、SCAT ではデータの全体を見ながら分析を開始し、最後までそのデータ全体を見ていることになる。主観性をある程度排除し、すべてのデータを使用するという点において量的研究と親和性があるといえる。以上二つの視点から本稿で SCAT分析を使用することに妥当性があると考えられる。図図表表44--11 SSCCAATT分分析析ににおおけけるる４４スステテッッププ事前準備ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4 逐語録のセグメント化テクスト中の注目すべき語句の抽出テクスト中の語句の言いかえの付与それを説明するような、テクスト外の概念の付与テーマ・構成概念の付与ストーリーラインの構築（現時点で言えること）理論記述「このテーマから言えること」出所：大谷（ 2019）pp.275-277より筆者作成 44..11 分分析析対対象象　　　　　　　　　　　出所：大谷（2019）pp.275-277より筆者作成 ‒ 91 ‒ 国人持ち株比率が10％以上であることを条件とし抽出した後、３業種から、便宜的抽出法を使用し９社を選定した。４．２　使用データ使用データは、図表４－３に示した質問事項に沿って、分析対象企業９社担当者にインタビュー調査を行った結果を逐語録化し、その文字データを全て使用する。また、図表４－２に示した取締役会の形態、外国人持ち株比率および株価の推移のデータはQuick Astra Manager から入手した。４．１　分析対象分析対象は先行研究に倣い東証一部上場企業時価総額上位300社を抽出し、その後、江川（2017）に倣い女性社外取締役を選任している、３業種９社の役員および取締役会関係部署にインタビュー調査を行った（図表４－２）。９社の抽出方法はジャッジメンタルサンプリング法により抽出した。抽出方法の詳細は、東京証一部上場企業のうち、時価総額上位300社を抽出しその後、2015年CGコード導入前より社外取締役を選任している企業を抽出し、女性社外取締役を１名以上選任しており、本稿定義のとおり、女性活躍推進に一定の評価があり、外図表４－２　インタビュー調査企業一覧 *1000万以下端数省略 *時価総額上位280社より抽出＊CGコード以前から　社外取締役を導入△＝ H D でなく子会社等で認定取得業種会社名発話者時価総額（百万円）形態社長の出身取締役会の人数独立社外取締役数女性社外取締役数女性取締役比率社外取締役導入年女性社外取締役導入年外国人持株比率なでしこ銘柄（選定回数）えるぼし認定くるみん選定製造業A社 A 2,695,200監査役設置会社他社 8 4 2 25.0% 2006 2015 30％以上 1 くるみん B社 B 4,800監査役設置会社創業家 8 3 2 25.0% 2014 201410%以上 20%未満0 くるみん C社 C 2,864,700監査役設置会社生え抜き 8 4 1 12.5% 2002 2019 30％以上 4 プラチナサービス業D社 D 5,262,400指名委員会等設置会社生え抜き 11 5 1 9.1% 2001 2013 30％以上 1 〇プラチナ E社 E4,220,800指名委員会等設置会社生え抜き 14 5 3 21.4% 2003 2006 30％以上 5 〇くるみん F社 F5,483,700指名委員会等設置会社生え抜き 10 4 2 20.0% 2011 2011 30％以上 1 〇プラチナ金融業G社 G 3,673,000指名委員会等設置会社合併会社 13 6 1 7.7% 2014 201420%以上 30%未満4 △ プラチナ H社 H 14,300指名委員会等設置会社合併会社 15 7 1 6.7% 2013 2017 30％以上 1 △ プラチナ I社 I2,891,600指名委員会等設置会社生え抜き 12 6 2 16.7% 1999 2010 30％以上 1 〇くるみん出所：筆者作成図表４－３　９社対象のインタビュー項目 1社外取締役の役割について 2取締役会の社内取締役と社外取締役の理想的な比率 3なぜ女性社外取締役を選任したのか 4女性社外取締役が企業に与える影響と選任の効果（具体的な例があれば） 5女性社外取締役の選任基準 6今後の女性社外取締役（女性活用）に期待すること 7今後の理想的な女性取締役比率（社内・社外） 8株主・投資家との対話から感じる女性社外取締役選任の影響・効果　　　　　　　　　出所：筆者作成 ‒ 92 ‒ 理想的な比率は「社内取締役男女・社外取締役男女の四象限が同人数」であり、「社内女性取締役の育成が急務」となる。社長の出身が社外であればより取締役会に自由度が増す傾向にある。一方、生え抜き社長がトップを務める企業は「取締役会の半数以上は社内が望ましい」という傾向にあった。（３）なぜ女性社外取締役を選任したのか全発話者において「消費者およびステイクホルダーに男女が半数の割合で存在するのに対し、取締役会が男性だけの構造は歪である」と見解を示した。製造業からは「顧客の立場に立ったアドバイスをもらうため女性社外取締役を選任した」という回答が多く、３業種の中でより顧客目線が強い傾向が表れた。外国人持ち株比率の高い企業ほど、「CGコード以前より投資家からの指摘があり導入を考えた」と回答した。（４）女性社外取締役が企業経営に与える影響全発話者において「女性社外取締役を選任して良かった」というポジティブな発話が認められた。ただ、江川（2017）が「インタビューを行ったのが女性なのであまりネガティブな話をしにくかったのかもしれない」と指摘している通り、本インタビューイーも女性であったため、その傾向を否定できない。インタビューを行った９社の回答者は１社を除きすべて男性であった。 SCAT分析ステップ２「テクスト中の注目すべき語句」として、この質問に対する回答の頻出ワードは「女性は忖度をしない」「女性はズバリ言う」などであり、女性社外取締役が取締役会において存在感があることが示された。一方で「男性は会議の流れに沿った質問をするが、女性は違う角度から質問を出す」と多くの発話者が感じている。この考察は、各人の分析結果を突き合わせた解釈の部分であり、SCAT５．分析結果 SCAT分析は公開されているEXCELフォーマット（大谷、2019）を用いて分析を行った。紙面の関係上、資料２にSCAT分析を添付する。インタビュー調査の結果からSCATステップ１テクスト中の注目すべき語句を５－１（１）から（６）に示した。そして５－２にSCAT分析ストーリー・ラインの概要から導き出された理論的記述に基づく総合的考察を示しさらに資料３にて全社の理論的記述（一部抜粋）を添付する。５．１　インタビュー調査の注目すべき語句（１）社外取締役の役割一般的には、社外取締役の主な役割は経営方針や経営改善について自らの知見に基づき助言を行うこと、経営の監督を行うことと考えられている。しかし、インタビュー対象の９社は複数の社外取締役を選任しているので、社外取締役各々に求めていることが違う。社外取締役のうち弁護士には法務、公認会計士には金融など、専門性に基づく監督を求めている。一方、企業経験者や女性社外取締役には経営全般について助言を求めている。特に「社長にアクセルやブレーキをかけてもらいたい」「社内の人間にはない知識で助言をして欲しい」という、社内取締役の立場では難しい発言や知識を社外取締役に求める傾向がみられた。（２）取締役会における社外取締役と社内取締役の理想的比率社外取締役を早くから導入している企業は「社外取締役比率100％でもいい」という意見があった。しかし、多くの企業は「社内の構造、仕事が分かる人間が取締役会にいないと社員が不安に感じる」と主張をしている。特に業務形態が多岐に渡っている企業ほど社内取締役の重要性を主張している。 ‒ 93 ‒ 流から国内機関投資家から女性社外取締役選任について質問が多いようである。５．２　ストーリー・ラインの概要から導き出された理論的記述に基づく総合的考察図表５－１に、ストーリー・ラインから導き出された考察の概念図を付与する。女性社外取締役を選任することにより以下のような効果・影響があった。また資料３に、９社のストーリー・ラインの一覧（抜粋）を示す。発見事実１：女性社外取締役が取締役会に入ることによって、議論に多様性や新規性が生まれることが分かった。具体的には、（１）女性社外取締役の発言が新商品開発、企業情報開示、マーケティングの方法において新しい発案があることが分かった。（２）男性は上・横を見て仕事を行い、議案に沿った深堀の質問をする、女性は忖度なくあらゆる方向から質問を行う、男女が入ることにより、議題における面（女性）と奥行（男性）の広がりが増すという、多様性の良い結果があることが分かった。発見事実２：ストーリー・ラインより、ステイクホルダーの意識は、以下のように変化していった。従業員に対して、（１）女性従業員の「上級職」育成において、女性社外取締役を「手本」とする意識が生まれた。調査企業は女性活用に一定の評価がある企業であるため、採用時には優秀な女性を採用出来る機会が多いが、その手厚い社内制度に女性が頼り切ってしまい社内取締役が育たないというジレンマを取締役会関係者は感じている。手厚い社内制による個々のデータの分析結果の共通性・一般性（あるいは差異性・個別性）を検討した結果である。（５）今後、どのようなことで「女性」に期待をするのかインタビュー企業９社は、「女性活躍推進」の評価を受けている企業である。そのため「女性を採用しやすい」「優秀な女性が当社に来てくれる」というメリットがある反面、「社内の規則が他社や世間と比べより女性が利用しやすいため、その制度に頼りすぎ社内の女性が育ちにくい」「支店にいる間はよくても、グローバルな立場で活躍する女性が生まれにくい」「がつがつとしたネゴシエーションが難しい」という風土を作り出し「女性活躍推進」のための制度が手厚いが故に「社内女性取締役の育成」の難しさが浮彫となったことを９社中６社が発話の中で示した。そのため「特に外資系などで厳しい荒波にもまれていた女性社外取締役を選任しお手本としてもらう」傾向にあった。また、発話者Ａは「企業内で女性活躍推進の後押しをしてきたが、Ａ社と関わるサプライチェーンがまだ女性活躍推進の面では着手が遅く、担当が女性だと相手企業から難色を示される古い習慣が残っている。自社だけが取り組みに積極的でもサプライチェーン全体で行わなければ女性が育ちきれない」ことが分かり、日本全体の古い社会構造を指摘している。（６）投資家との対話から感じる女性社外取締役選任の必要性と影響インタビュー企業９社は外国人持ち株比率が高いため、ほとんどの企業が欧米（特に欧州）の投資家から「なぜ女性取締役がいないのか、導入すべきだ」と2015年CGコード導入以前より指摘があった。また、女性社外取締役を選任したことにより外国人投資家からの評価が上がった。最近では日本のESG投資の大きな潮 ‒ 94 ‒ 選任することによりそのリスクを回避することができる。（２）女性社外取締役を選任することにより、株主・投資家は、企業とのエンゲージメントの成果を感じ、双方向に対話が行われていることを実感し、投資家の満足度が上昇する。一方で、「女性の選任」が数字ありきとなる懸念がある。（３）日本の株式市場の低迷の１つに海外の投資家の日本企業の評価が低いことが挙げられるが、女性社外取締役の選任を積極化することにより、外国人投資家による日本の株式市場の評価が高まる可能性が考えられる。通常は、SCATでは概念の階層化はしないので、この図表５－１は、ステップ＜４＞を使ってストーリー・ラインを書いたものを図表化したものである。度と「女性社内取締役」の誕生は逆相関を生んでいる可能性があるのではないか。（２）自社だけでなくサプライチェーン全体で「女性活躍推進」に取り組む必要があるという課題が明らかになった。（３）女性だけでなく、男性社員にも「女性活躍推進」の教育が大切であり、それを企業トップに宣言してもらいたいと思っていることが分かった。発見事実３：ストーリー・ラインよりステイクホルダーへは、以下のような効果を期待していることが分かった。株主・投資家に対して、（１）女性取締役（社外・社内）を採用していない時は、グローバル比較で遅れている企業と投資家から認定をされ、ネガティブスクリーニングのリスク（銘柄選定時に投資対象から外される）があったが、女性社外取締役を図表５－１　ストーリー・ラインの概要から導き出された理論的記述に基づく総合的考察 10 図図表表55--11スストトーーリリーー・・ラライインンのの概概要要かからら導導きき出出さされれたた理理論論的的記記述述にに基基づづくく総総合合的的考考察察出所:筆者作成 55..33 考考察察以上の発見事実から、女性社外取締役が企業価値向上における、取締役会・ステイクホルダーへ与える影響として以下のことが明らかになった。（１）女性社外取締役の役割役割①：新しい視点を取締役会に提供をする奥行ではなく広がりのある質問社内の組織や制度に縛られず忖度なく発言顧客目線に立った提案によるイノベーション創出役割②：社内女性の手本となり社内女性上級職の育成キャリア志向の強い女性は、社外取締役を憧れの存在とし具体的な目標とする役割③：株主・投資家へのアピール・リスク低減。数字ありきではないが「女性取締役がいないことは選別の対象にもならない」というネガティブスクリーニングの回避女性採用することで投資家は「エンゲージメントの成功」と感じる（２）女性社外取締役選任の問題点問題点①：企業は、女性社外取締役の選任は社内取締役のロールモデルとして期待している。しかし、取締役会に関わる発話者たちは、他社と比較し、手厚い女性活躍推進の社内制度を作った故、結局は女性社外取締役のような荒波に揉まれてきたような人物はその制度の中では育ちにくいと感じている。しかし手厚い制度がなければ、採用時に優秀な女性を採用することは難しい。それは、女性社外取締役の存在は、キャリア志向の強い女性のロールモデルとして期待はできるが、社内の女性従業員の意識変化への影響は、制度とロールモデル、女性従業員への意識変化と企業はまだ模索中である。　　　　　　出所：筆者作成 ‒ 95 ‒ 採用することは難しい。　　　　　それは、女性社外取締役の存在は、キャリア志向の強い女性のロールモデルとして期待はできるが、社内の女性従業員の意識変化への影響は、制度とロールモデル、女性従業員への意識変化と企業はまだ模索中である。問題点②：「数字」が先行し、企業が本当に求める能力の女性社外取締役を選任しているのだろうか。　　　　　投資家や世論の圧力から女性を選任するが、実際第一候補、第二候補と求める人物からの乖離がある。今後、スキルマトリクスの作成によりその問題点は解消するのではないか。６．終論と今後の課題６．１　本研究の成果と限界本稿の分析は、上場企業３業種９社と限られたサンプル数ではあるものの、SCAT分析を通じて、女性社外取締役にはあらゆる立場からの役割が期待されていることが分かった。しかし、女性社外取締役を選任することによる二つの問題点も５．３で挙げたように明らかになった。これら二つの問題点は、SCAT分析という１語からでも解析ができる分析手法が、本来であれば「こぼれ落ちてしまう」データを解析することを可能にしたためである。江川（2017）では、女性社外取締役について研究は行われているものの、社外取締役の研究論文の一部である。また、インタビュー結果に対し、定性的手法で分析はされていない。そのため、概ねポジティブなインタビュー結果が多いため、本稿の新規性は、ネガティブな側面の企業の問題点を、インタビュー調査とSCAT５．３　考察以上の発見事実から、女性社外取締役が企業価値向上における、取締役会・ステイクホルダーへ与える影響として以下のことが明らかになった。（１）女性社外取締役の役割役割①：新しい視点を取締役会に提供をする　　　　奥行ではなく広がりのある質問　　　　社内の組織や制度に縛られず忖度なく発言　　　　顧客目線に立った提案によるイノベーション創出役割②：社内女性の手本となり社内女性上級職の育成　　　　キャリア志向の強い女性は、社外取締役を憧れの存在とし具体的な目標とする役割③：株主・投資家へのアピール・リスク低減。　　　　数字ありきではないが「女性取締役がいないことは選別の対象にもならない」というネガティブスクリーニングの回避　　　　女性採用することで投資家は「エンゲージメントの成功」と感じる（２）女性社外取締役選任の問題点問題点①：企業は、女性社外取締役の選任は社内取締役のロールモデルとして期待している。しかし、取締役会に関わる発話者たちは、他社と比較し、手厚い女性活躍推進の社内制度を作った故、結局は女性社外取締役のような荒波に揉まれてきたような人物はその制度の中では育ちにくいと感じている。しかし手厚い制度がなければ、採用時に優秀な女性を ‒ 96 ‒ 分析で導き出したことにあると考える。また、本稿では女性社外取締役が企業経営に与える影響が、取締役会、ステイクホルダー（従業員、株主・投資家）のそれぞれの立場から整理することができた点であり、この研究結果から、企業が少なからず今後の女性社外取締役の選任への促進、さらに役割の事例（ロールモデル）として参考にする可能性を示すことができた。６．２　今後の研究課題本稿の分析対象以外の業種・企業に調査を拡大する必要がある。また本稿で用いたSCAT 以外の研究方法による検証も必要と考える。今後の具体的な研究課題として三点を考える。一点目は、女性取締役の選任は企業価値（財務的価値）を向上させるのか、という点である。女性社外取締役の選任が活発に議論されるようになったのは、2018年改訂CGコード以降であり、先行研究はそれ以前が多いので十分なデータが蓄積されていなかった可能性がある。今後はデータの蓄積も含め、定量的な調査を考えていきたい。二点目は、取締役会における女性役員比率の上昇は、企業価値を向上させるのか、という点である。現在、女性社外取締役を複数名選任する企業が増加しているが、比率と企業価値について女性社内取締役に積極的な資生堂などの企業を事例研究から検証を行いたい。合わせて今回明らかになった問題点である「女性活躍推進制度が整っている会社」と「女性社内取締役が育たない」ことの相関関係の有無なども事例研究で調べていきたい。そして三点目は、女性社外取締役の選任が取締役会の意思決定にどのような変化を与えたのか。本稿では、３業種９社からのインタビュー調査であったが、今後はインタビュー社数の増加、女性社外取締役だけでなく男性社外取締役へのインタビューを行いたい。今後、残された課題を明らかにしていきたい。 ‒ 97 ‒ 資料１　先行研究レビュー一覧 13 出所：先行研究より筆者作成資資料料２２各各社社スストトーーリリーー・・ラライインンのの概概要要かからら導導きき出出さされれたた理理論論的的記記述述（（抜抜粋粋））量/質著者発表年国対象の詳細分析対象の期間分析指標結果 Carter 2003 アメリカフォーチュン1,000社から抽出した 797社1997年 Tobinʼs Q 相関あり Rose 2007 デンマークデンマークの上場企業（金融除く）1998年から2001年 TobinʼｓQ 相関なし Catalyst 2007 アメリカフォーチュン500社 2001年から2004年 ROS、ROIC、ROE 相関あり Adams and Ferreira 2009 アメリカS&P 500 、S＆P中型、S＆P小型指標から構成企業1,939社を対象1996年から2003年 ROA,Tobinʼs Q 相関あり（負） Carter 2010 アメリカ S&P 500 1998年から2002年 Tobinʼs Q ROE 相関なし Haslam Ryan 2010 イギリス FTSE100 2001年から2005年 Tobinʼs Q 相関あり（負） Marinova 2010 オランダ上場企業（オランダ186社・デンマーク84社）金融を除く2007年 Tobinʼs Q 相関なし Catalyst 2011 アメリカフォーチュン1000社 2004年から2008年 ROS、ROIC、ROE 相関あり Credit Swiss 2012 グローバル MSCI ACWI Index 2005年から2011年 ROE,PBR 相関あり Ahern and Dittmar 2012 ノルウエーノルウエーの企業248社 2001年から2009年 Tobinʼs Q 相関あり（負） Denzso and Ross 2012 アメリカ S&P 1500 社 1992年から2006年 ROA,ROE,Tobin'sQ 相関あり Joecks 2013 ドイツドイツ上場企業151社 2000年から2005年ROE（役員3人以上の臨界質量理論）相関あり Sabatier 2015 フランスフランス企業 2015年 ROA,Tobin'sQ 相関あり IMF 2016 ヨーロッパ諸国 200万社以上のサンプリング 2013年純利益、税引前利益、総資産に対するEBIT相関あり伊藤 2018 韓国韓国証券取引所、773社 2013年から2017年 ROE、ROA 相関なし伊藤 2018 インドボンベイ証券取引所と国立証券取引所、3,904社2013年から2017年 ROE、ROA 相関なし伊藤 2018 オーストラリアオーストラリア証券取引所、1,751 社2013年から2017年 ROE、ROA 相関あり伊藤 2018 アメリカニューヨーク証券取引所、3,561社 2013年から2017年 ROE、ROA 相関あり伊藤 2018 イギリスロンドン証券取引所、1,140社 2013年から2017年 ROE、ROA 相関あり伊藤 2018 ドイツフランクフルト証券取引所、567 社2013年から2017年 ROE、ROA 相関なし伊藤 2018 フランスユーロネクスト・パリ、696社 2013年から2017年 ROE、ROA 相関なし ROA 相関なし Tobin's Q 相関あり松本 2019 日本 TOPIX500のうち236社 2007年から2013年 Tobinʼs Q とROA 相関なし(コントロールにより消滅） Siegel・児玉 2011 日本経済産業省「企業活動基本統計」2001年、2004年、2006年の 3年間ROA製造業：有意（限定）サービス業：負の相関関係宮崎 2017 日本日本企業の124社 2009年から2015年 ROA 相関なし ROA 相関なし Tobinʼs 相関あり ROA 相関なし Tobinʼs 相関あり伊藤 2018 日本東証3,627社 2013年から2017年 ROE、ROA 相関なし大野 2020 日本女性役員女性活躍推進データベースから東証一部上場、従業員1,000 人以上、女性役員比率30％以上の 3条件2014年から2018年株価、ROE 相関あり ROS 相関あり ROA 相関あり期末株価相関あり ROE 相関なし男女共同参画研究報告 2003 日本総合職女性を多く採用、女性平均勤続年数の⻑い、女⼦学⽣就職人気ランキング上位の女性活躍が進んでいる企業の中から１０社2002年ヒアリング調査 Positive 堀井 2008 日本ダイバーシティ＆インクルージョンの推進に2年以上取り組んでいる企業の管理職10社2007年アンケート調査ダイバーシティ推進で企業業績は向上する江川 2017 日本東証一部上場企業、女性の社外取締役を１名以上選任している企業を３業種14社2017年インタビュー調査 Positive量的調査量的研究辻本 2013 小池 2017CSR企業総覧掲載企業 2007年から2010年松田 2020 日本東証33業種「化学」に属する売上高500億円以上の企業100社財務情報：2019年3月期、役員情報：t-1期末時点の 2018年3月期日本質的調査日経225銘柄 2009年度から2015年度一ノ宮 2011 日本東証一部および同二部上場企業 2,341社（金融・保険を除く）役員情報：2007年度財務情報：2006年度のROS、 ROA、ROE、期末株価日本　出所：先行研究より筆者作成 ‒ 98 ‒ 資料２　各社ストーリー・ラインの概要から導き出された理論的記述（抜粋） 14 A B C D E F G H I・社外取締役には助⾔とブレーキ機能を期待。・社⻑の意思決定が早い利点の反⾯、暴⾛のおそれがある。・取締役会はまだ以前の日本型を引きずっているので社⻑に意⾒が⾔えない。・⿃の目で幅広く俯瞰してみることを求めている。・女性社外取締役には女性の目線による助⾔。・本当は社内の女性取締役を採用したいが、候補者がいない・当社は女性のための制度を手厚く設定しており、それが故に優秀な女性が多く募集の際に来てもらえる。・その制度のために逆に入社後は守られているので「ぬるま湯」につかってしまう。・現在、当社で活躍している女性は中途採用で社外から来た人が多い。・男女関係なく荒波にもまれないと取締役の候補者にはなれない。・スキルマトリクスがあり、女性だからと⾔って取締役にするのではなく、能⼒が到達していない人は男女とも取締役にはできない。・取締役会でも、それ以外の場⾯でも、女性の⽅がしがらみがなく、忖度なく発⾔をする。・社⻑もそのような意⾒に⽿を傾け、以前の社内の社⻑よりも社外から選任した社⻑の⽅がそのような傾向がある・当社は女性活用に⼒をいれて様々な制度を設定している。・サプライチェーンはまだまだそのような動きはない。・製造側で女性を活用しても小売側で女性の登用が少ないと、せっかく活用した女性が不利益が起きる。・日本全体で考えないといけない問題。・取引先が男性ばかりだと当社の女性のよさを⽣かしきれない。・世の中が変わるためには男女双⽅への教育をトップが⼒強い意志で行うことが大事・海外の投資家からは「女性を採用しろ」というより「なぜいないのか」と疑問に思われる。・人材の流動化も含めて日本の終身雇用よりJOB型になる⽅が、より投資家の要望にこたえられる。・社外取締役には監督機能を期待しており、実務を監督してほしい。・業種として免許制なので、特殊性の高い業務のため社内の人数も必要である。・社外取締役には合併会社ゆえの複雑さの理解が困難なため、社内取締役が一定数必要である。・同社をよく理解した上で社外取締役として招聘する。そのためにステップがあり、まずは社外取締役以外の役割でスタートしてもらう。・女性社外取締役は目的意識をズバリと指摘する。・男性社外取締役は同業他社と足並みを揃えようとするが女性は独自でいく。・女性活躍推進は同社はトップが熱心に行っている。・社内取締役は候補の育成を推進しているがなかなか育たない。・中途採用で社内取締役育成をする。社内だとどうしても荒波にもまれていない。・中途採用＝時間を買う。・支店では女性管理職は業務が出来ても海外との交渉⼒は難しいと感じる。それが社外女性との対比で鮮明になる。・海外の投資家からは「女性活躍推進」指摘がある。特に欧州。・海外投資家に指摘をされトップに意識が変更。・候補者の底上げ。・ガラスの天井問題はまだある。・合併会社ゆえのレガシー。・社外取締役には助⾔と監督の両⾯を期待している。・同社は早くから女性社外取締役を導入、しかし女性社内取締役はいまだに不在である。・女性社外には女性活躍推進を期待。・女性は忖度なく発⾔し議題が広がる。・以前はライフイベントで休む女性の昇進は遅かった。・職系統合により優秀な女性の引き上げを図る。・日本もJOB型が必要。・手厚すぎると社内がぬるま湯になる。・心地よく辞めない。キャリア志向の女性を引き上げるために制度は必要だが、キャリア志向がない女性は制度に甘える。・女性を的確に評価できる制度が大事である。・社内女性はハングリー精神が薄い。・女性は行動⼒不足という評価が多い。・制度のために逆に入社後は守られているので「ぬるま湯」につかってしまう。・メンバーシップ型のような職系にすることでやる気がある人の引き上げを可能としたい。・現在は女性の年齢分布がいびつ。・株主は30％クラブなどを推奨している。・女性比率をある程度満たした企業には、株主は次は外国人比率を求められる。取締役会において社外取締役には助⾔を求めている。・監督の両視点も必要だが、助⾔の⽅が大きい。・社⻑の暴⾛を⽌める役割。・イエスマンはいらない。・女性社外取締役を選任しているが、社内の女性育成活動は積極的。・女性社外取締役は手助けをしてくれる。・女性社外取締役は憧れであり、実際の育成にはもっと近い存在が必要。・女性は今までライフワークで昇進が遅れてきた。・それを不満に思う人もいる。・女性だからと⾔って女性の味⽅ではない。・働く女性は応援したい。・同じ女性として一⽅が制度を利用し、もう一⽅はないという状況と会社の評価を明確化にすることが大事だと感じている。・制度が存在しないと女性は働けない。・社内の女性が育っていない以上、女性社外取締役に女性の人材開発を含めて期待している。・取締役会における人数は現在がちょうどいいと考えている。・女性社外取締役が、女性育成コミュニティなどで⾒本を⾒せてくれる。・顧客は多岐にわたるが宣伝広告の目線で女性の目線が入って華やいだ。・女性は顧客目線に立つことができる。・女性は全般的に忖度をしない。・海外の投資家は、企業の自発性（３０％クラブなど）を評価する。・ESGの潮流から国内投資家の女性活躍に指摘する。・専門性の高い社外取締役にそれぞれが得意分野の助⾔を求める。・現在は女性社外取締役を選任しているが、女性消費者を対象とした製品を扱っているのに対して女性が取締役会にいないことを不安に感じた。・今後のESGの観点からも女性が取締役会にいないことはリスクである。・社内の女性が育っていない以上、女性社外取締役に女性の人材開発を含めて期待している。・取締役会における人数は社内取締役が多い⽅がいいと考えている。・女性社内取締役を増やしたいと思っている。・財務情報のアドバイスは社内で行うので必要としていない。・女性社外取締役が、社内の派閥や主従関係を打破した・顧客にとって成分・価格と最適な製品が⽣まれ売上の向上につながった。・顧客目線に立つことで、いい成分を安く提供するという男性にはなかった視点であった。・男性社内取締役だけの構成では、議⻑に対しての忖度が⽣まれる。・規定路線に沿ったやりとりの末に議論が決定される。・女性社外取締役を選任したことにより、その暗黙値を⾶び越えて活発な議論や忖度のない疑問が投げかけられる。・女性活躍には数字を掲げ昇進試験を受けてもらう。・女性を特別扱いする制度にならないよう、男性にも理解を求め社内性差別を解消している。・女性の働きやすい職場は「女性厚遇・女性贔屓」のようになりがち。・「数字ありき」のため⼦会社が親会社から設定された数字を守ろうとしている。・海外の投資家の目線は日本の同業他社だけでなくグローバルの同業他社と比較して日本の取締役会に女性がいないことに違和感を感じている。女性社外取締役を選任することが海外投資家に株を買ってもらうために必要な条件と感じている。・社⻑へのアクセルとブレーキを社外取締役に求める。・社外取締役同⼠のなれ合いを防ぐ⼯夫を行っている。・社外取締役には助⾔を求めている。・今までと違う取組みをするときこそ、社外取締役の存在が重要になる。・社内取締役もある程度必要である。・業態の複雑さから社内の人間が必要と感じる。・社内の人間がゲームチェンジを知らないと改革は起きない。・必ずしも四象限が望ましいわけではない。・女性社外取締役の選任は他社比較遅れたが、問題視していない。・女性社外取締役を選任するにあたり、条件を厳しくしていた。・女性に求めすぎていた。・取締役会では厳しいことを発⾔するのは女性である。・女性は時間がない。・女性は時間節約のためにストレートにものをいう・女性は仕事だけでなく家庭もあり役割が多岐に渡る。・女性は柔軟性があり、人との交流がうまい。・女性は忖度ないが人間関係を良好に保てる。・同社は上級職は中途採用はしない。・女性社員の⽅が教育が手厚く、逆差別を男性が感じないかという問題点がある。・早く女性社内取締役を育てなければいけないという日本社会のプレッシャーがある一⽅でその制度が不平等ではないか。・トップは女性活躍推進に瀬局的でも現場がそうとは限らないのは、現場に古いレガシーがありそこが打破できない。・ヨーロッパの投資家からは毎回女性比率を指摘されていた・日本の投資家はESGの潮流・制度より自社の積極性である30％クラブの⽅が投資家の評判が良い傾向にある。・社外取締役が入ることで失敗の起きる可能性を低くできる。・女性社外取締役選任前までの取締役会は通り一辺倒で多様性が欠如していた。・女性の目線と男性目線の差異が多様性を⽣む。・男性は会議の流れに沿い、女性は突拍⼦ない。・女性は恥ずかしがらないので積極的である。・女性は細やかな男性では気が付かない体調まで気が付き思いやることで、強い発⾔をしても円滑な人間関係を保てる。・女性はバランス感覚がよい。・社内女性の育成が課題。・社内女性の育成には社外女性がお手本を示す。・制度を拡充させても活かせる人とそうでない人がいる。・制度のためにやる気をそがれる人がいる。・トップがジェンダー容認の教育を行う必要性がある。・社内女性の候補者はプレッシャーが大きい。・同社は最前線に女性社内はいない。・やらせる冒険を社内が取らない。・比率は四象限が望ましい。・株主・投資家は年々指摘が増加している。・日本企業は男性がヘッドという刷り込みがある。・海外投資家は男性がヘッドという刷り込みがないため、女性上級職を求める。・社外取締役にはプロフェッショナルは求めない。・社内に無いリソースを社外に求める。・社内取締役＋αの人物を社外取締役に求める。・社外取締役は世の中の動きに敏感な人が望ましい。・同社の蛸壺化を救う。・社外取締役には情報の非対称性の解消のため⻑時間レクチャーを行う。・社内取締役と社外取締役は人物本位であり数字ありきではない。・自社では自社を正しくは評価できない。そのために社外取締役の役割を要する。・社内と社外の融和が必要である。・女性の目線と男性の目線は⽣物学的に違うと感じる。・社内が「イエスマン」にならないための社外取締役の制度である。・女性活躍推進は会社が整備しないといけない。・制度をそろえるのは1丁目1番地である。・行き過ぎた制度とその使い⽅が問題であり、人によって活かしきれない。・女性に手厚い制度が当たり前になると成⻑が⽌まる。・制度を使用する女性の意識の問題もある。・レガシーを引きずった男性従業員が障壁になる。・女性は男性よりも優秀さを求められている。・スーパーウーマン以外が取締役になる時代がくる。・株主投資家は女性比率が上昇すると対話成功事例と感じる。・ESGの流れから国内投資家の質問リストに女性比率が導入された。・社外取締役は人によって役割が違うからこそ、社外取締役は複数名が必要である。・グローバルかつ業態の複雑さから、つい仕事が分かっている社内取締役で固めてしまう。・同じような人間が集まり取締役会が蛸壺化。・プライム市場などの変更は中小企業はこれから導入し、大企業はすでに導入しているので、大きな変化はないと思う・人数ありきよりも結局は取締役1人1人の能⼒が必要である。・多様性・ダイバーシティこそが取締役会の議論を活性化させる。・割合は執行が男性が多いのであれば、監督は女性多くてもいい。・取締役会において男性社外取締役は自身の専門性の発⾔を行うが女性社外取締役は全体的な発⾔が多い。・男性だけの場合、役職に引きずられがちな結果がでるが、女性は役職等は気にせず意⾒を⾔える。・執行と監督の分離のためにも社外・女性・多⽅⾯な監督の目が大切である。・多彩な社外取締役のメンバーでも、男性は役職に忖度をする意識があるが、女性はその場で必ず発⾔をする姿勢がある。・女性社外取締役自分のスキルマトリクスが「女性活躍」でなくても、女性社外取締役は女性全体の象徴として取締役会にいるような責任感を思っている。・女性は忖度せずに発⾔し、男性は会社人間であるため、社外取締役でも上下関係を気にする傾向にある。・社内の女性従業員は育成されているが、海外での取引などが課題である。・女性社外取締役は厳選されたスーパーウーマンのため女性従業員の模範となって欲しい、すべての女性がスーパーウーマンではないので普通の女性が普通に出世する⽅法を考えなければならない。・今後は女性社内の意識改革が必要。・歴史的な日本の慣習・保守的な企業の過去により女性社内の育成が進んではいない。・投資家・株主との対話では、海外の株主・投資家からは、管理職における男女比率の問題点をSSコード導入前から問題点を提示されていた。・国内の投資家からは2018年の改訂CGコード以降、そのような対話が増加した。・背景にはESG投資の潮流もあるだろう。出所：各社SCAT より筆者作成資資料料３３ SSCCAATT分分析析出所：各社SCATより筆者作成 ‒ 99 ‒ 研究科紀要（教育科学）』第54巻２号pp.27- 44. 大谷尚（2019）『質的研究の考え方～研究方法からSCATによる分析まで』名古屋大学出版会大野威（2020）「女性役員登用の国際比較および女性役員と企業業績・株価の関係－女性役員比率30％以上の日本企業の株価とROE の分析－」『立命館産業社会論集』55号第４号pp.1-20. 小池裕子（2017）「女性役員の登用と企業業績の関係－パネルデータ分析による検討－」『異文化経営研究』第14号pp.45-55. サトウタツヤ・春日秀郎・神崎真実編（2019）参考文献一ノ宮士郎（2011）「ジェンダーダイバーシティが企業業績に及ぼす影響」『會計』180 （1） pp.72-87. 伊藤正晴（2018）「各国上場企業の女性取締役の状況と財務パフォーマンスとの関係」『大和総研調査季報』2018年秋季号Vol.32. 江川雅子（2017）「社外取締役の役割－取締役会改革、女性社外取締役の現状分析－」『証券経済研究所』第100号pp.37-54. 大谷尚（2008）「４ステップコーディングによる質的データ分析手法 SCATの提案－着手しやすく小規模データにも適用可能な理論化の手続き」『名古屋大学大学院教育発達科学資料３　SCAT分析 15 出所：SCAT データ（D 社）より筆者作成参参考考文文献献一ノ宮士郎（ 2011）「ジェンダーダイバーシティが企業業績に及ぼす影響」『會計』180(1) pp.72-87. 伊藤正晴（2018）「各国上場企業の女性取締役の状況と財務パフォーマンスとの関係」『大和総研調査季報』 2018年秋季号Vol.32. 江川雅子（20 17 ）「社外取締役の役割ー取締役会改革、女性社外取締役の現状分析ー」『証券経済研究所』第100号pp.37-54. 大谷尚（2008）「4 ステップコーディングによる質的データ分析手法 SCAT の提案－着手しやすく小規模データにも適用可能な理論化の手続き」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要（教育科学）』第54 巻2号pp.27-44. 大谷尚（2019）『質的研究の考え方～研究方法からSCAT による分析まで』名古屋大学出版会 pp.275-277. 大野威（2020）「女性役員登用の国際比較および女性役員と企業業績・株価の関係-女性役員比率30％以上の日本企業の株価とROE の分析-」『立命館産業社会論集』55 号第4 号 pp.1-20. 小池裕子（2017）「女性役員の登用と企業業績の関係-パネルデータ分析による検討-」『異文化経営研究』第14号pp.45-55. サトウタツヤ・春日秀郎・神崎真実編（ 2019）『質的研究法マッピング-特徴をつかみ、活用するために』新曜社 Siegel, Jordan・児玉直美（2011）「日本の労働市場における男女格差と企業業績」『RIETI 番号発話者テクスト <１>テクスト中の注目すべき語句 <２>テクスト中の語句の言い換え <３>左を説明するようなテクスト外の概念<４>テーマ・構成概念（前後や全体の文脈を考慮）<５>疑問・課題 1 聞き手社外取締役の役割をどう考えますか 2 発話者D人にもよりますね、XXさん（元官僚）にはそれこそリスク管理・監督。あとはいい意味での商社のビジネスうをしらないからこそベーシックな質問をされたりする。そこから気づくこともあるので、助⾔というポイントも大事です。結論からいうと監督も助⾔も両⽅の機能が強いですね。人による・リスク管理・監督・いい意味で商社のビジネスを知らない・ベーシックな質問・そこからの気づき・助⾔・監督も助⾔も両⽅の機能が強い社内ではない・人により求める役割が違う・社内はしない質問・アドバイス・管理・運営・１つではない同じ会社出身者からだと「知ってること」前提で話が進み、新しい発想が⽣まれない・人によって役割が違うので社外は複数名が必要となる社外という立場だからこそ、新しい発想が⽣まれる・人によって役割が違うからこそ、社外は複数が必要である。社内と社外では情報の非対称をどう解決したらいいのか 3 聞き手取締役会における、社内と社外の割合についてどう考えますか 4 発話者D個人的な意⾒ですが社外取は多い⽅がいいと思っています。業種にもよると思いますけど、特に商社は複雑じゃないですか、いろいろなビジネスをやっているので、それがゆえに、どうしても蛸壺化する懸念があるので。だからなるべく社外の⽅が多い⽅が個人的にはいいと思います。社外は多い⽅がいい・業種にもよる・商社は複雑・いろいろなビジネスをやっている・蛸壺化・社内取締役を少なくする・ビジネスがややこしい・外から⾒えにくい・セクターによる・閉じた社会・視野が狭い社内取締役・同じような人間が集まり閉じた社会になる・新しい意⾒が⽣まれにくい・商社という業態の複雑さから、つい社内取締役で固めてしまうが、同じような人間が集まりそ閉じた取締役会、会社になりがち。そうならないためにも社外取締役を社内よりも多くする。複雑な業務を社外で理解ができるのか 5 聞き手そう考えると改訂CGや、来年のプライムの社外1/3は妥当ですか 6 発話者Dまあ、もうすでに大手は取り入れてますから、あまり大きくはかわらないんだと思います。1/2とかになると、また変わるのかもしれませんね。人数もですが、中身も大事ですよね。すでに大手は取り入れている・大きく変わらない・1/2になると変わる・人数よりも中身・大企業は導入済みが多い・変化は小さい・過半数・数より能⼒中小型企業はまだ・大企業の変化は少ない・過半数を超えると変わる・割合よりも1人1人の能⼒が必要プライム市場などの変更は中小企業はこれから導入し、大企業はすでに導入しているので、大きな変化はないと思うが、人数ありきよりも結局は取締役1人1人の能⼒が必要である 7 聞き手なぜ女性の社外取締役を選任しましたか 8 発話者D女性がいた⽅が、間違いなく大きな視点でものをとらえる⽅が多いのでバランスが素晴らしいです。男性社会は、誤解を恐れずに⾔いますと単細胞化する懸念がありますので、女性のダイバーシティの効いた、一歩高いところからみた視点を持っている。入れるべき。もっと比率が多くても、いいと思っている。半々もしくは半分以上女性になってもいいと思っている。女性は大きな視点でものをとらえる・女性はバランスが良い思考・男性だけの取締役会の時は単細胞化・女性を採用し、ダイバーシティの効いた取締役会になった・半分以上が女性でもいいと思っている・女性の視点は包括的・女性は均整の取れた考え・男性のみは画一的な視点・意⾒の多様化・女性が過半数以上男女の割合が均等もしくは女性が多い⽅がよい・多様性が⽣まれる・必要世の中が男女がいるのに、男性しかいない取締役会は不自然。ダイバーシティの大切さ。男性だけだと単細胞となる取締役会が、女性が入ることでよりバランスの取れたモノとなる。多様性・ダイバーシティこそが取締役会の議論を活性化させる。割合は執行が男性が多いのであれば、監督は女性多くてもいい。性差の問題だけか。経験値など。 9 聞き手女性社外取締役を採用したことによる効果はいかがでしたか。 10 発話者D女性がいると男性もいい意味できちんと意識をする。バランスのとれた発⾔をするケースが多いので、そういう意味では合理的な結論を出しやすい環境になる。特に社外の女性。男性の社内だけだと、結論が決まっている取締役会が多い。なおかつ議⻑が会⻑、会⻑はうちの場合元社⻑なんですけど、それで会⻑が議⻑だったりすると、会⻑が「そう」というともう、それに決まってしまう。それは取締役会じゃない。執行はそれでもいいが、監督はそれではいけないので、全監督機能がある取締役会は女性社外が入るべきですね。女性がいると男性いい意味できちんと意識をする・バランスの取れた発⾔・合理的な結論を出しやすい環境・社外の女性・男性の社内だけだと、結論が決まっている・議⻑が会⻑・会⻑の意⾒で決まっている・取締役会の意味をなさない・執行はそれでもいい・監督はそれではいけない・取締役会は女性社外が入るべき・女性の存在が男性のふるまいを変える・女性は均等・男性は偏り・妥当・順当な結論・元の役職に引きずられる・執行と監督の分離女性の発想は全体的、網羅的・男性は専門的・社内だけだと忖度・異性の目・社外の目・執行と監督の分離のためにも多様性が必要男性は自身の専門性の発⾔を行うが女性は全体的な発⾔が多い。また男性だけの場合、役職に引きずられがちな結果がでるが、女性は役職等は気にせず意⾒がある。執行と監督の分離のためにも社外・女性・多⽅⾯な目が大切である。スキルマトリクスの網羅が必要か 11 聞き手その役割は男性社外では担えないのですか？ 12 発話者Dいやー、⾔える⽅は⾔えるかもしれませんが、先ほども⾔ったように、会⻑がこうって⾔ってしまうと、決まってしまう。社外取のメンバー⾒てもらっても、学者さんは経営が分からないという引け目や、元官僚の⽅も企業のしくみに踏み込めず、一番口出すのが、他の企業経営経験者ですね。その点女性はどのような出身や立場でも、きちんと意⾒を⾔ってくださいますね。もしかしたら「女性代表」として、女性の地位向上のために、その場その場で意識をもって行動しているのかもしれません。そういう位置にいる女性は。会⻑がこうって⾔ってしまうと、決まってしまう・学者さんは経営が分からないという引け目・元官僚の⽅も企業のしくみに踏み込めず・一番口出すのが、他の企業経営経験者・女性はどのような出身や立場でも、きちんと意⾒を⾔って・「女性代表」として・女性の地位向上のため・その場その場で意識をもって行動・そういう位置にいる女性・上司に意⾒が⾔えない・男性の多様な社外でも上司に意⾒が⾔えない・他企業経営者が私的が多い・女性は自分がそこにいることを示そうとする・女性の省庁・意思表示男性は社外でも社内役職に忖度する場合がある・他企業で経営を経験した社外は意⾒をいう・女性は出身や属性に関係なく意⾒をいう・女性は自分の成果を残す・社外女性・選ばれた人財・多彩な社外取締役でも、男性は役職に忖度をする意識があるが、女性はその場で必ず発⾔をする姿勢がある。それは、自分のスキルマトリクスが「女性活躍」でなくても、女性社外取締役は女性の象徴として取締役会にいるように思っているのではないかなぜ女性は忖度をしないのか 13 聞き手 14 発話者D期待することは、あまり斟酌（しんしゃく）せずに、KYでいいので思ったことを⾔ってほしいということです。そういう、自由に多⽅⾯から発⾔するということが取締役会の機能ですから、そう、あまり女性の⽅が、周りを気にしないで⾔ってほしいということです。男性はサラリーマンが染みついて、気にして⾔えないということですから、先ほども⾔いましたけど。女性の⽅が、ずばり、気にせず『私はこう思いますから』といえますよね。私は、女性の⽅が頭いいと思っています。優秀ですよね、「まちがっていますあなた」ってどんな時も⾔えると思っています。それはすごいと思います。そして何よりも、男性が⾔えないようなこと、でも女性の⽅が厳しいことを柔らかく⾔うことが得意だと感じます。かどがたたないように、ですね。⾔い⽅は女性の⽅が柔らかいけど、⾔っていることは辛辣だと思います。⾔いたいことを場の雰囲気壊さず柔らかく、でも中身は辛辣に、ね。⾔ってることは素晴らしいけどマイノリティの人種は発⾔⼒がおちるんですよ、僕も海外でそう感じるんです、なので女性をもっと採用し、女性が発⾔がおちないような環境で、もっと取締役会の活発化してほしいですね。期待すること・斟酌せず・KYでいい・思ったことを⾔ってほしい・自由に多⽅⾯から発⾔・取締役会の機能・周りを気にしない・男性はサラリーマンが染みついて・気にして⾔えない・女性の⽅が、ずばり・気にせず・『私はこう思いますから』といえる・女性・頭いい・優秀・厳しいことを柔らかく⾔う・得意・女性の⽅が柔らかい・⾔っていることは辛辣・マイノリティ・人種・発⾔⼒がおちる・女性をもっと採用・活発化・男性・サラリーマン・染みつき・上下関係・忖度した発⾔・女性は忖度せず・場を読み・⾔い回しを柔軟・⾔いにくいことをいう・少数者の場合は発⾔しにくい・女性を増加・取締役会の改善・おしすすめる男性・上司にさからえない・会社人間・社外取締役という立場・上の顔色をうかがう・女性（特に社外）は気にしない・多様性の発⾔・取締役会の活性化・女性は忖度せずに発⾔・男性は会社人間・社外取締役でも上下関係を気にする・少数が発⾔を躊躇せず⾔えることが、取締役会の活性化につながる・なぜ男性は上下関係を気にするのか。社⻑の発⾔を気にするのは人事権か 15 聞き手取締役会意外では、どういうことを期待しますか 16 発話者Dそうですね、あとはですね、やはり、社内の女性が育ってないというか、育ってはいるんですけど、例えば日本でやっていけても、商社だと海外とのぎりぎりのネゴシエーションできるかとか、そういうところ。やはり、今の社外取締役の女性は鍛え抜かれた、選ばれ⽅なので、そうお手本になってくださいと思います。社内の女性・育っていない・日本国内・やっていける・海外・ネゴシエーション・社外取締役・女性・鍛え抜かれた・選ばれた・手本・なってください女性従業員・育成・日本・役割果たす・日本以外・交渉・社外取締役・場数を踏んだ・厳選されている・みほん・女性従業員の育成が課題・海外で駆け引きできる女性が不足・女性社外取締役は厳選されたスーパーウーマン・女性従業員の模範・女性従業員は育成されているが、海外での取引などが課題・女性社外取締役は厳選されたスーパーウーマンのため女性従業員の模範となってほしい・しかしすべての女性がスーパーウーマンではないので普通の女性が普通に出世する⽅法は？男性管理職がみなスーパーマンではない。しかし、女性管理職にはスーパーウーマンが求められる。しかしすべての女性はスーパーウーマンではない。スーパーウーマン以外も活躍できることが大事ではないか？（普通の女性が普通に出世すること） 17 聞き手 18 発話者Dグッドクエスチョンですね。社内・社外比率ありきでなく、結果としてこうあればいいなと思うのは、半々です。女性が社内も社外も半々となることがいいと思っている。バランスが、あたりまえですけど人口構成的にそうなるのがいいと思います。今、現在、そうなれていないボトルネックは我々の世代（50代なかば）やもう少し若い世代が、相変わらずレガシーをひきずっていることですね、封建的な日本的な考え⽅をやっぱり、年をとるとひきずりやすくなるのでそのブレイクスルーができるかどうかだと思いますね。比率ありきではなく・女性・社内・社外・半々・バランス・人口構成的・いい・ボトルネック・相変わらず・レガシーをひきずって・封建的・日本的な考え⽅・ブレイクスルーができるか・女性社内外・５０％ずつ・均衡・登用の障害・従来型の・古いまま・突破する社内女性の登用・社内外の調整・女性社内・選任の障壁・既存の・歴史的に・打破する女性社内取締役も女性社外取締役と同数が望ましい・しかし歴史的な日本の慣習・保守的な企業の過去・女性社内の育成がすすまず・この古い体質を打ち破ることが大事古い日本の企業体質はどのように打ち破れるのだろうか 19 聞き手株主・投資家から「女性活躍推進」への指摘はありますか 20 発話者D指摘はありました、それこそ、2013年くらいから、欧米の投資家からは指摘されましたね。女性の管理職が少ないとか。そして、国内の投資家から指摘されるようになったのは、そうですね、それこそ、ここ１．２年くらい、⾔われ始めましたね。なんていうか、安倍政権や、2018年のあのCGコード以降多いかな、あとはESG投資の流れとか流行り的にいう人もいるのかなとも感じますが。でも、海外の投資家に以前から⾔われていましたよ。指摘・あり・2013年・欧米の投資家・女性の管理職・少ない・国内の投資家・安倍政権・CGコード以降・ESG投資の流れ・流行り・意⾒・CGコード前から・海外投資家・女性の登用・日本の投資家・政策・改訂CG コード・ESG投資の増加問題点の指摘・海外投資家や株主・管理職男女比率・2014年のSSコード前から・国内の投資家・ 2018年改訂CGコード以降・ESGの潮流海外の株主・投資家からは、管理職における男女比率の問題点をSSコード導入前から問題点を提示されていた。国内の投資家からは2018年の改訂CG コード以降、そのような対話が増加した。背景にはESG投資の潮流もある海外の投資家が2013年から指摘しても実際企業は2018年の改訂CG コードまで流れは大きくならなかったのはなぜか。5年間何をしていたのだろうか。番号発話者テクスト <１>テクスト中の注目すべき語句 <２>テクスト中の語句の言い換え <３>左を説明するようなテクスト外の概念<４>テーマ・構成概念（前後や全体の文脈を考慮）<５>疑問・課題今後の取締役会における女性について教えて下さい。先ほど社内女性の言及もありましたが、御社は社内女性取締役がいませんが、社内女性取締役の必要性など D社は、取締役会において、社外取締役という立場だからこそ、新しい発想が⽣まれる。社外取締役は人によって役割が違うからこそ、社外取締役は複数名が必要である。商社というグローバルかつ業態の複雑さから、つい仕事が分かっている社内取締役で固めてしまうが、同じような人間が集まりそ閉じた取締役会・会社になりがちになってしまう。そうならないためにも社外取締役を社内よりも多くする必要がある。プライム市場などの変更は中小企業はこれから導入し、大企業はすでに導入しているので、大きな変化はないと思うが、人数ありきよりも結局は取締役1人1人の能⼒が必要である。多様性・ダイバーシティこそが取締役会の議論を活性化させる。割合は執行が男性が多いのであれば、監督は女性多くてもいい。取締役会において男性社外取締役は自身の専門性の発⾔を行うが女性社外取締役は全体的な発⾔が多い。また男性だけの場合、役職に引きずられがちな結果がでるが、女性は役職等は気にせず意⾒を⾔える。執行と監督の分離のためにも社外・女性・多⽅⾯な監督の目が大切である。多彩な社外取締役のメンバーでも、男性は役職に忖度をする意識があるが、女性はその場で必ず発⾔をする姿勢がある。それは、女性社外取締役自分のスキルマトリクスが「女性活躍」でなくても、女性社外取締役は女性全体の象徴として取締役会にいるような責任感を思っているのではないか。女性は忖度せずに発⾔し、男性は会社人間であるため、社外取締役でも上下関係を気にする傾向にある。少数が発⾔を躊躇せず⾔えることが、取締役会の活性化につながる。社内の女性従業員は育成されているが、海外での取引などが課題である。女性社外取締役は厳選されたスーパーウーマンのため女性従業員の模範となってほしいが、すべての女性がスーパーウーマンではないので普通の女性が普通に出世する⽅法を考えなければならない。今後は女性社内取締役も女性社外取締役と同数が望ましい。しかし歴史的な日本の慣習・保守的な企業の過去により女性社内の育成が進んではいない。この古い日本企業の体質を打ち破ることが大事である。投資家・株主との対話では、海外の株主・投資家からは、管理職における男女比率の問題点をSSコード導入前から問題点を提示されていた。国内の投資家からは2018年の改訂CGコード以降、そのような対話が増加した。背景にはESG投資の潮流もあるだろう。取締役会において、社外取締役という立場だからこそ、新しい発想が⽣まれる。・社外取締役は人によって役割が違うからこそ、社外取締役は複数名が必要である。・商社というグローバルかつ業態の複雑さから、つい仕事が分かっている社内取締役で固めてしまう。・しかし同じような人間が集まり閉じた取締役会・会社になりがちになる・そうならないためにも社外取締役を社内よりも多くする必要がある。・プライム市場などの変更は中小企業はこれから導入し、大企業はすでに導入しているので、大きな変化はないと思う・人数ありきよりも結局は取締役1人1人の能⼒が必要である。・多様性・ダイバーシティこそが取締役会の議論を活性化させる。・割合は執行が男性が多いのであれば、監督は女性多くてもいい。・取締役会において男性社外取締役は自身の専門性の発⾔を行うが女性社外取締役は全体的な発⾔が多い。・男性だけの場合、役職に引きずられがちな結果がでるが、女性は役職等は気にせず意⾒を⾔える。・執行と監督の分離のためにも社外・女性・多⽅⾯な監督の目が大切である。多彩な社外取締役のメンバーでも、男性は役職に忖度をする意識があるが、女性はその場で必ず発⾔をする姿勢がある。・女性社外取締役自分のスキルマトリクスが「女性活躍」でなくても、女性社外取締役は女性全体の象徴として取締役会にいるような責任感を思っている。・女性は忖度せずに発⾔し、男性は会社人間であるため、社外取締役でも上下関係を気にする傾向にある。・少数が発⾔を躊躇せず⾔えることが、取締役会の活性化につながる。・社内の女性従業員は育成されているが、海外での取引などが課題である。・女性社外取締役は厳選されたスーパーウーマンのため女性従業員の模範となってほしいが、すべての女性がスーパーウーマンではないので普通の女性が普通に出世する⽅法を考えなければならない。・今後は女性社内取締役も女性社外取締役と同数が望ましい。・歴史的な日本の慣習・保守的な企業の過去により女性社内の育成が進んではいない。・この古い日本企業の体質を打ち破ることが大事である。・投資家・株主との対話では、海外の株主・投資家からは、管理職における男女比率の問題点をSSコード導入前から問題点を提示されていた。・国内の投資家からは2018年の改訂CGコード以降、そのような対話が増加した。・背景にはESG投資の潮流もあるだろう。・取締役会における社内取締役と社外取締役では情報の非対称をどう解決したらいいのか・社外が半分以上になった場合、複雑な業務を社外取締役が理解ができるのか・発⾔や発想は性差の問題だけか。・経験値などの違いはどうか。・スキルマトリクスの網羅が必要か・なぜ女性は忖度をしないのか・なぜ男性は上下関係を気にするのか・社⻑の発⾔が社外もきにするのはなぜか、人事権か・男性管理職がみなスーパーマンではない。しかし、女性管理職にはスーパーウーマンが求められる。しかしすべての女性はスーパーウーマンではない。スーパーウーマン以外も活躍できることが大事ではないか？（普通の女性が普通に出世すること）・古い日本の企業体質はどのように打ち破れるのだろうか・海外の投資家が2013年から指摘しても実際企業は2018年の改訂CGコードまで流れは大きくならなかったのはなぜか。ストーリーライン理論記述さらに追及すべき点今後の「女性活躍推進」において御社の女性社外取締役に期待することは何ですか　出所：SCATデータ（Ｄ社）より筆者作成 ‒ 100 ‒ and Firm Financial Performance.” Corporate Governance : An International Review, Vol.18, Iss.5, pp.396-414. 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