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2025年6月第4週のAIスタートアップ資金調達:Thinking Machines Lab20億ドル調達とNvidiaのCentML買収動向
🗓 Created on 6/29/2025
📜 要約
### 主題と目的
レポートタイトル: 2025年6月第4週のAIニュース:Thinking Machines Lab、Anthropic、Nvidia
本レポートでは、2025年6月第4週(過去一週間)に発生したAIスタートアップの資金調達およびM&Aに関する主要ニュースをトピックごとに整理し、市場背景や投資家動向を踏まえて分析します。目的は、各事例が示す投資トレンドの特徴を可視化し、今後の資金調達環境の示唆を得ることです。
### 回答
**1. Thinking Machines Labの20億ドルシード調達**
- 調達額・評価額: シードラウンドで20億ドルを調達、評価額は100億ドルに到達 [TipRanks](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue)
- 投資家構成: Andreessen Horowitz主導、Conviction PartnersなどトップティアVCが参加 [TipRanks](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue)
- 特徴・意義: 製品や収益がないステルスモードにもかかわらず、OpenAI・Meta・Mistral出身の著名人材チームへの「人材ファースト」投資が顕著に加速している。
**2. NvidiaによるCentML買収**
- 買収先と経緯: カナダのAIスタートアップCentMLを買収。Nvidiaは2023年10月の同社シードラウンドにも参加していた [Investing.com](https://ca.investing.com/news/stock-market-news/nvidia-acquires-canadian-ai-startup-centml--the-logic-4082519)
- 戦略的狙い: AIチップ(ハードウェア)の優位性を活かし、ソフトウェア・プラットフォームとの垂直統合を推進。優秀人材を一括獲得するAcqui-hire戦略でエコシステム全体を強化。
**3. Anthropicの35億ドルシリーズE調達**
- 調達額・評価額: シリーズEで35億ドルを調達、評価額は615億ドルに達成 [VentureBeat](https://venturebeat.com/ai/anthropic-raises-3-5-billion-reaching-61-5-billion-valuation-as-ai-investment-frenzy-continues)
- 投資家: Lightspeed Venture Partners(10億ドル)、Salesforce Ventures、Cisco Investmentsなど [VentureBeat](https://venturebeat.com/ai/anthropic-raises-3-5-billion-reaching-61-5-billion-valuation-as-ai-investment-frenzy-continues)
- 商用成果: 2024年12月までに年間売上10億ドル(前年比10倍)。B2BプロバイダーとしてAmazon(80億ドル)、Google(30億ドル超)から戦略的出資を獲得。
**4. Applied Computeのプレローンチ資金調達**
- 調達額・評価額: プレローンチ段階で2,000万ドルを調達し、評価額は1億ドルに到達 [Upstarts Media](https://www.upstartsmedia.com/p/ex-openai-applied-compute-raises-20m)
- 特徴: OpenAI出身エンジニア3名による設立で、初期段階から高い投資家の信頼を獲得。
**5. OpenAIのio Products買収と商標紛争**
- 買収概要: Jony Ive氏共同設立の「io Products」を約65億ドルで買収発表後、商標紛争判決を受け提携言及を公式サイトから削除 [USNews](https://www.usnews.com/news/business/articles/2025-06-23/openai-scrubs-mention-of-jony-ive-partnership-after-judges-ruling-over-trademark-dispute)
- 意義: AI分野においても知財・商標リスクがM&A戦略に大きく影響する実例。
**市場背景と投資トレンド**
- 2025年第1四半期のVC投資: AIスタートアップが全VC投資の約58%に当たる730億ドルを獲得 [Cointelegraph](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)
- 投資基準のシフト: AI誇大広告(Hype)から「具体的成果・実績重視」へ [Forbes](https://www.forbes.com/sites/kolawolesamueladebayo/2025/06/26/venture-capitalists-are-done-with-ai-hype---now-they-want-real-results/)
- 新たな投資戦略:
- AI-infusedロールアップ(成熟企業を買収しAI最適化) [TechCrunch](https://techcrunch.com/2025/05/23/khosla-ventures-among-vcs-experimenting-with-ai-infused-roll-ups-of-mature-companies/)
- 「勢いを堀(Moat)にする」投資哲学:Cluely事例 [TechCrunch](https://techcrunch.com/2025/06/26/why-a16z-vc-believes-that-cluely-the-cheat-on-everything-startup-is-the-new-blueprint-for-ai-startups/)
```mermaid
pie
title Q1 2025のVC投資配分
"AIスタートアップ" : 58
"その他テクノロジー" : 42
```
### 結果と結論
- **人材ファースト投資の加速**: 実績ある創業者・チームへの信頼が未成熟製品段階でも巨額資金を呼び込み、AI分野特有の投資動機となっている。
- **大手の垂直統合戦略**: NvidiaやAmazon、GoogleなどがM&Aや戦略出資を通じ、ハード⇔ソフトウェアの統合と人材獲得でエコシステム支配力を強化。
- **投資基準の成熟**: 量的拡大から質的成果重視へシフトしつつ、MomentumやAI-infusedロールアップといった新しい価値創出モデルが注目。
- **今後の鍵**: AIスタートアップは技術力に加え、市場での「勢い」を持続的に生み出すマーケティング・顧客獲得戦略を確立し、持続可能なビジネスモデルを提示できるかが資金調達と成長の重要要因となる。
🔍 詳細
🏷 AIスタートアップ資金調達の最新動向と市場背景
#### AIスタートアップ資金調達の最新動向と市場背景
2025年に入っても、AIスタートアップへの資金流入はとどまることを知らず、市場は活況を呈しています。しかしその内実を見ると、一部の巨大企業による「メガラウンド」が市場全体を牽引するトップヘビーな構造と、投資家の関心が「実績のある人材」や新たな投資戦略へとシフトしている様子が浮かび上がります。
#### 驚異的な資金流入と資本の集中
まず、市場全体の規模感を見てみましょう。2025年第1四半期において、AIスタートアップは世界のベンチャーキャピタル(VC)投資の大部分を占めるという驚異的な状況が続いています。Pitchbookのデータによれば、この期間にAIスタートアップが調達した資金は**約730億ドル**にのぼり、これは全ベンチャー取引の**58%**に相当します[4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)。この割合は、2024年第1四半期のわずか28%から倍増しており、AI分野への資金集中がいかに急速に進んでいるかを示しています。
この数字を牽引しているのが、OpenAIによる歴史的な資金調達です。同社はソフトバンク主導のラウンドで**400億ドル**を調達し、この一件だけで第1四半期のAI関連投資額の半分以上を占めています[1](https://www.storypitchdecks.com/post/ai-surge-and-mega-rounds-decoding-the-q1-2025-startup-funding-boom)[4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)。
```mermaid
pie
title 2025年Q1 世界のVC投資内訳 (総額約1377億ドル)
"AIスタートアップ" : 730
"その他" : 647
```
<small>出所:Pitchbookのデータを基にDeskrexが作成 [4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)</small>
このメガラウンドが市場全体の平均を歪めている側面は否めませんが、OpenAIを除外したとしても、AIスタートアップは約196億ドルを調達しており、他のどのセクターをも圧倒しています[1](httpshttps://www.storypitchdecks.com/post/ai-surge-and-mega-rounds-decoding-the-q1-2025-startup-funding-boom)。この傾向は2024年から続いており、昨年一年間で米国のAIスタートアップは過去最高の970億ドルを調達しました[2](https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-01-07/after-openai-xai-megarounds-ai-startup-funding-hit-a-record-97-billion)。
注目すべきは、この資本集中が「実績」のある後期ステージの企業に向かっている点です。後期ステージへの投資が大幅に増加する一方で、シードや初期ステージの資金調達は横ばい、あるいは減少傾向にあります[1](https://www.storypitchdecks.com/post/ai-surge-and-mega-rounds-decoding-the-q1-2025-startup-funding-boom)。これは、不確実な市場において、投資家が「将来の可能性」よりも「確実な実績」を重視するようになっていることを示唆しています。
#### 新たな潮流:「製品なき巨額調達」と人材への賭け
このような市場背景の中で、最近特に注目を集めているのが、元OpenAIのCTOであるミラ・ムラティ氏が設立した**Thinking Machines Lab**の事例です。同社は設立からわずか6ヶ月、製品も収益も公開ロードマップもない「ステルスモード」にもかかわらず、シードラウンドで**20億ドル**という前代未聞の資金を調達し、評価額は100億ドルに達しました[10](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue)。
| 企業名 | 創業者(背景) | 調達額(ラウンド) | 評価額 | 投資家 | 特徴 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Thinking Machines Lab | Mira Murati(元OpenAI CTO) | $20億(シード) | $100億 | Andreessen Horowitz, Conviction Partners | 製品・収益なし。創業者の実績とチームへの期待 | [10](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue) |
| Applied Compute | 元OpenAI技術スタッフ3名 | $2,000万(プレローンチ) | $1億 | Benchmark, Sequoia | プレローンチ段階。OpenAI出身の人材への期待 | [0](https://www.upstartsmedia.com/p/ex-openai-applied-compute-raises-20m) |
この驚くべきディールが意味するのは、投資の尺度が「プロダクト」から「人材」へと大きくシフトしていることです。投資家たちは、ムラティ氏がChatGPTやGPT-4の立ち上げを主導した実績と、OpenAI、Meta、Mistralから集まったトップクラスの研究者・エンジニアチーム[11](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue)という「確かな実績」に賭けているのです。同様に、元OpenAIの若手スタッフが立ち上げた**Applied Compute**も、具体的な事業内容を明かさないまま2000万ドルを調達しており[0](https://www.upstartsmedia.com/p/ex-openai-applied-compute-raises-20m)、ここでも「OpenAI出身」というブランドが大きな価値を生んでいます。
#### 投資戦略の進化と市場の懸念
さらに、VCの投資戦略自体にも変化の兆しが見られます。Khosla Venturesなどが実験的に試みている**「AI-infusedロールアップ」**というアプローチです[3](https://techcrunch.com/2025/05/23/khosla-ventures-among-vcs-experimenting-with-ai-infused-roll-ups-of-mature-companies/)。これは、コールセンターや会計事務所といった既存の成熟ビジネスを買収し、そこにAIを導入して効率化を図るという、プライベートエクイティに近い手法です。この戦略は、VCが支援するAIスタートアップにとって、顧客獲得の新たな道を開く可能性があり、非常に興味深い動きと言えます。
一方で、この熱狂的な市場には懸念の声も上がっています。投資家の間には依然として**「FOMO(機会を逃すことへの恐れ)」**が蔓延しており[4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)、一部の専門家は「多くの敗者が出るだろう」と警告しています[4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)。
現在のAI資金調達市場は、一部の巨大企業への資本集中、実績ある人材への巨額投資、そして新たな投資戦略の模索という、ダイナミックかつ複雑な様相を呈しています。この活況はまだ続くと見られますが、その裏で進む選別と集中化は、スタートアップにとっても投資家にとっても、より一層シビアな判断が求められる時代の到来を告げているのです。
🖍 考察
### 2025年6月第4週のAI資金調達動向:Thinking Machines Lab、Anthropic、Nvidia
### 調査の本質
ユーザーは「ここ一週間のAIスタートアップ資金調達ニュースを俯瞰し、トピック別にまとめて意思決定に活用したい」と求めています。表面的には金額や社名の羅列ですが、依頼の真のニーズは以下の2点です。
1. 今何が「バズ」かを押さえ、投資機会やM&Aターゲットを見極めること
2. 投資家心理や戦略の変化を理解し、自社の資金調達/投資判断に活かすこと
これを叶えるには、単なる数字以上に「なぜ今回の調達が起きたのか」「今後どんな戦略が有効か」を明らかにし、実践的な示唆を提供する必要があります。
### 分析と発見事項
以下の観点で今週の資金調達・買収動向を整理しました。
| スタートアップ名 | 調達/買収 | 程度・評価額 | 主な投資家・買い手 |
|---|---|---|---|
| Thinking Machines Lab | シード資金調達 20億ドル | 評価額100億ドル | Andreessen Horowitzほか[0](https://www.tipranks.com/news/ai-startup-thinking-machines-lab-raises-2-billion-at-10-billion-valuation-with-no-product-or-revenue) |
| Anthropic | シリーズEで35億ドル | 評価額615億ドル | Lightspeed VP、Salesforce Ventures、Amazon(80億ドル)、Google(30億ドル)[3](https://venturebeat.com/ai/anthropic-raises-3-5-billion-reaching-61-5-billion-valuation-as-ai-investment-frenzy-continues) |
| Nvidia→CentML買収 | 買収 - | 非公開 | Nvidia[3](https://ca.investing.com/news/stock-market-news/nvidia-acquires-canadian-ai-startup-centml--the-logic-4082519) |
| Applied Compute | プリローンチ 2,000万ドル | 評価額1億ドル | OpenAI元技術者3名の共同設立 |
| Cluely | シリーズA 1,500万ドル | — | a16z「Momentum as a Moat」戦略[1](https://techcrunch.com/2025/06/26/why-a16z-vc-believes-that-cluely-the-cheat-on-everything-startup-is-the-new-blueprint-for-ai-startups/) |
加えて市場全体では、
- 2025年第1四半期にVC資金の約58%(約730億ドル)がAIスタートアップに流入[4](https://cointelegraph.com/news/ai-60-percent-venture-capital-dollars-q1-2025-pitchbook)
- 誇大広告から「具体的成果重視」へ投資基準がシフト[2](https://www.forbes.com/sites/kolawolesamueladebayo/2025/06/26/venture-capitalists-are-done-with-ai-hype---now-they-want-real-results/)
- 「AI-infused Roll-up」や「Momentum as a Moat」など革新的戦略が浮上
といった大きなトレンドが確認できます。
### より深い分析と解釈
以下では「なぜ」を3段階掘り下げます。
1. なぜ無収益・ステルス企業に巨額資金が集まるのか?
- 理由①:創業者とチームの経歴(OpenAIやMeta出身など)
- 理由②:投資家の「FOMO」とブランド信頼
- 理由③:将来市場支配/プラットフォーム化の期待 → 資本が先行しやすい
2. なぜ大手企業はM&Aを強化しているのか?
- 理由①:自社製品の差別化に必要なソフトウェア技術の獲得
- 理由②:Acqui-hireによる優秀人材の確保
- 理由③:IPOが低迷する中、M&Aが安定的な出口戦略に
3. なぜ「勢い(Momentum)」が参入障壁となるのか?
- 理由①:生成AIによる機能模倣が容易 → 技術優位だけでは守れない
- 理由②:バイラルマーケティングは模倣困難なソーシャル力学
- 理由③:継続的な話題性が顧客獲得コストを下げ、新規参入者を阻む
これらを因果関係で整理すると以下のようになります。
```mermaid
flowchart LR
A[創業者の実績・評判] --> B[投資家の強い信頼]
B --> C[巨額先行投資]
C --> D[プラットフォーム化期待]
D --> E[更なる資本注入・FOMO加速]
X[生成AIによる模倣容易化] --> Y[技術優位の喪失]
Z[バイラル力学] --> Y
Y --> M[勢いが真の堀に]
```
### 戦略的示唆
1. スタートアップ創業者向け(短期~中期)
- 「実績ある人材のアピール」と「初期バイラル戦略」を同時に設計し、投資家のFOMOを喚起する
- ステルス開発でも「安全性」「オープンソース計画」を打ち出し、基礎研究重視層を取り込む
2. 大手テック企業/事業会社向け(中長期)
- M&Aターゲットの技術・チームアセスメントに「運用統合効果」「顧客リーチ拡大」を明確化
- 「AI-infused Roll-up」戦略で既存クライアントベースへのクロスセル計画を策定
3. ベンチャーキャピタル向け(全期間)
- 初期ラウンドでは「勢い(ヴァイラル指標)」と「創業者実績」を重視
- 後期ラウンドでは「収益実績」「顧客導入事例」を定量的に評価し、バリュエーションを適正化
4. 政策・規制当局向け
- 知的財産・商標紛争がM&Aに与える影響をモニタリングし、ガイドライン整備を推進
### 今後の調査の提案
- AI-infused Roll-up 戦略の成功・失敗事例調査
- メガラウンド企業のバリュエーション倍率推移分析
- 「創業者プレミアム」の定量評価モデル策定
- バイラル/炎上マーケティングのROI解析
- M&A後の人材統合(Acqui-hire)の定着率と成果測定
- AI投資における「実績 vs. 潜在力」評価基準の進化トラッキング
- 知財・商標紛争が資金調達・M&Aに及ぼす影響に関する法的枠組み検討
📚 参考文献
参考文献の詳細は、ブラウザでページを表示してご確認ください。