📜 要約
### 主題と目的
本調査は、過去1年以内にB2B(企業間取引)市場を対象とした「エンベデッドファイナンス(組込型金融)」または「バーティカル領域特化型決済サービス」を提供するスタートアップが実施した資金調達の事例を特定し、その動向を明らかにすることを目的としています。
具体的には、国内外の注目すべき資金調達事例を収集・分析し、以下の点を明らかにします。
- どのようなビジネスモデルやサービスが投資家から高い評価を得ているか。
- 主要な資金調達の規模、ラウンド、および投資家。
- 市場の成長を牽引する主要なトレンドと成功戦略。
この調査を通じて、B2Bフィンテック分野における最新の市場動向、成長領域、および今後の事業機会に関する深い洞察を提供します。
### 回答
#### 市場概観:バーティカルSaaSと金融の融合がもたらす巨大な潮流
「あらゆる企業がフィンテック企業になる」という言葉が現実味を帯びる中、特にB2B領域では、特定の業界に特化した「バーティカルSaaS」に金融機能を組み込む動きが活発化しています。このエンベデッドファイナンス市場は急速に拡大しており、ある調査では2029年までに2,374億米ドルに達すると予測されています[1](https://www.gii.co.jp/report/mama1515619-embedded-finance-market-size-share-growth-analysis.html)。
バーティカルSaaSは、業界特有の業務フローや商習慣を深く理解しているため、決済、融資、保険といった金融サービスを極めて自然な形でサービスに統合できます。これにより、SaaS事業者は従来の利用料収入に加え、決済手数料や金融仲介手数料といった新たな収益源を確保し、顧客企業はシームレスな金融体験と経営改善を実現できます。この「SaaS × 金融」の相乗効果が、投資家から熱い視線を集める最大の理由です。
#### 【国内】資金調達事例:バーティカルSaaSは「金融」で進化する
国内では、バーティカルSaaS企業が金融機能をテコにして事業を急拡大させ、大型の資金調達を成功させる事例が相次いでいます。彼らは業界の深い課題解決から得た顧客基盤とデータを活用し、TAM(Total Addressable Market)の壁を越えようとしています。
| 企業名 | 特化業界 | 直近の資金調達 | 金融サービスの概要と特徴 |
|---|---|---|---|
| **hacomono** | ウェルネス | シリーズD / 46億円 (2025年1月)[1](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22) | 決済サービスに加え、将来的には決済データを活用したレンディング(融資)やファクタリングの提供を目指す[1](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。 |
| **ダイニー** | 外食産業 | シリーズB / 74.6億円 (2024年9月)[5](https://newspicks.com/news/10666672/body/) | 業界最安水準の決済サービス「ダイニーキャッシュレス」を提供。POSやCRMデータと連携し、売上向上と利益改善に貢献[0](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。 |
| **エンペイ** | 教育・保育 | シリーズB / 8.5億円[2](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd) | 集金業務のキャッシュレス化サービス`enpay`や口座振替DXサービスを提供。7兆円ともいわれる巨大市場の「現金文化」という課題に挑む[2](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd)。 |
| **TAIAN** | ブライダル | シリーズA / 約6億円 (2024年11月)[3](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000063181.html) | Web招待状サービスにご祝儀・会費のオンライン決済機能を搭載。特定の利用シーンにおける決済ニーズを捉え、顧客体験を向上[3](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000063181.html)。 |
#### 【海外】資金調達事例:「インフラ化」と「超特化」の最前線
海外では、金融機能をAPIで提供する「インフラレイヤー」のスタートアップと、よりニッチな顧客セグメントに特化する「超特化型」のスタートアップが大型調達を成功させています。AIの活用も重要なトレンドとなっています。
| 企業名 | サービス概要 | 調達額 / ラウンド | 主な投資家・特徴 |
|---|---|---|---|
| **Ramp** | 経費管理から財務全般を担う「財務OS」プラットフォーム | 約2億ドル(協議中)[13](https://news.crunchbase.com/fintech-ecommerce/startup-unicorn-ramp-investment-founders-fund/) | 評価額160億ドルでの調達が協議されており、企業の財務フロー全体を担うプラットフォームとして絶大な期待を集める。 |
| **Slash** | 起業家など特定の顧客層に特化した「バーティカルバンキング」 | 4,100万ドル / Series B[5](https://fintech.global/2025/05/23/vertical-banking-fintech-slash-lands-41m-to-scale-tailored-business-banking/) | 「画一的な銀行サービスでは応えられない業界固有のニーズ」を解決するアプローチが高く評価されている。 |
| **Rainforest** | SaaSプロバイダー向け組込型決済(Payments-as-a-Service) | 2,000万ドル / Series A[11](https://techcrunch.com/2024/06/26/rainforest-lands-20m-to-challenge-stripe-with-embedded-payments-for-saas-providers/) | SaaS企業が決済からソフトウェア本体以上の収益を上げることを可能にするインフラを提供。 |
| **CrediLinq** | AIを活用したB2B組込型金融プラットフォーム(Credit-as-a-Service) | 850万ドル / Series A[12](https://www.finextra.com/newsarticle/45999/citi-joins-series-a-for-ai-powered-b2b-embedded-finance-platform-credilinq) | 世界的な金融大手Citiが出資。AIを用いて従来は評価が難しかった中小企業の与信を可能にする点が注目されている。 |
### 結果と結論
過去1年間のB2B向けエンベデッドファイナンスおよびバーティカル決済領域の資金調達動向を調査した結果、以下の主要なトレンドと結論が明らかになりました。
1. **成功モデルの確立:SaaS × 金融**
国内では、特定の業界に深く根差したバーティカルSaaSが、決済を起点として金融サービスへと事業を拡大する成功モデルが確立されています。hacomonoやダイニーの事例が示すように、これはSaaS事業者の収益源を多様化させると同時に、TAMの制約を打ち破る強力な戦略として投資家から高く評価されています。
2. **海外の二極化:インフラ提供と超特化**
海外では、金融機能をAPIとして提供し、あらゆるSaaSが金融サービスを組み込めるようにする「インフラ(as-a-Service)」企業(例: Rainforest)と、特定のペルソナ(例: Slashの"起業家")にまで絞り込んだ「超特化型」サービスが大きな潮流となっています。これは、市場の成熟と共に、より専門的で深い価値提供が求められていることを示唆します。
3. **AIによる与信革命の進展**
CrediLinqの事例のように、AIを活用してリアルタイムデータから与信判断を行うモデルが注目されています。これにより、従来の財務諸表ベースでは評価が難しかった中小企業への迅速な資金提供が可能となり、金融包摂の観点からも大きな可能性を秘めています。
**結論として、B2Bフィンテックの主戦場は、単なる決済の利便性向上から、各業界のビジネスプロセスに深く組み込まれ、データに基づいて経営課題そのものを解決するフェーズへと移行しています。** 成功の鍵は、①業界への深い理解、②決済を起点とした垂直統合、③データとAIの活用能力、の3点に集約されます。
今後は、エネルギー業界で検討されている蓄電池の価値を金融商品化するアイデアのように、物理的な資産を含むあらゆるビジネスリソースが金融と融合していく可能性があります[0](https://www.enegaeru.com/battery-strage-embededfinanceidea)。この潮流は、B2B取引のあり方を根底から変え、新たな産業構造を生み出すほどのインパクトを持つと考えられ、引き続き投資家の大きな関心を集めていくことは間違いないでしょう。
🔍 詳細
🏷 市場概観:急成長するB2Bエンベデッドファイナンスとバーティカル決済
### 【2025年最新】B2B組込型金融&バーティカル決済の資金調達動向レポート
#### 市場概観:急成長するB2Bエンベデッドファイナンスとバーティカル決済
「あらゆる企業がフィンテック企業になる」—かつて予言のように語られたこの言葉は、今や現実のものとなりつつあります。特にB2B(企業間取引)の領域において、「エンベデッドファイナンス(組込型金融)」と「バーティカル決済」は、単なるバズワードではなく、ビジネスのあり方を根底から変える巨大な潮流となっています。
エンベデッドファイナンスとは、決済、融資、保険といった金融機能を、本来は金融を専門としない企業のサービスやプラットフォームに直接組み込む仕組みのことです[2](https://contents.ximera.com/ximera-media-next-trends/2025-03-05-expanded-business-areas-facilitated-by-embedded-finance), [3](https://ecapital.com/blog/the-emergence-of-buy-now-pay-later-and-embedded-finance-for-b2b/)。これにより、ユーザーはサービスから離脱することなく、シームレスな金融体験を享受できます。この市場の成長ポテンシャルは極めて高く、ある調査では、世界のエンベデッドファイナンス市場は2024年の1,126億米ドルから、年平均16.1%で成長し、2029年までに2,374億米ドルに達すると予測されています[1](https://www.gii.co.jp/report/mama1515619-embedded-finance-market-size-share-growth-analysis.html)。また、別のレポートでは2026年には1,600億ドル以上に拡大するとの見込みも報じられており[2](https://contents.ximera.com/ximera-media-next-trends/2025-03-05-expanded-business-areas-facilitated-by-embedded-finance)、その急成長ぶりがうかがえます。
この潮流を力強く牽引しているのが、**「バーティカルSaaS」と金融の融合**です。
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#### 業界特化(バーティカル)が生み出す圧倒的な価値
特定の業界に特化して深い課題解決を目指す「バーティカルSaaS」は、金融機能を組み込むことで、その価値を飛躍的に高めています。幅広い業界で使える「ホリゾンタルSaaS」が既存のITコストの奪い合いになりがちなのに対し、バーティカルSaaSは業界特有の課題を解決することで、全く新しい市場を創造する力を持っています[93](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。
ウェルネス業界に特化したSaaSを提供するhacomono社はその好例です。同社はQRコードによる無人入退館システムを提供することで、店舗の人件費高騰という課題を解決しました。これは既存のIT予算ではなく「人件費」という全く別の予算から価値を生み出したことを意味します[88](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。さらに同社は2024年5月にFintech事業を立ち上げ、決済データに基づく融資(レンディング)やファクタリングといった、より深い経営支援サービスの提供を目指しています[5](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。このように、業界の商流やお金の流れを深く理解しているからこそ、単なる業務効率化に留まらない、本質的な金融ソリューションを提供できるのです。

この「業界課題の解決」というアプローチは、時にSaaSの提供価値を「コスト削減」から「売上向上」へと昇華させます。外食産業に特化するダイニー社は、「トップライン(売上)を上げられるSaaS」であることを強みに、2024年9月にはシリーズBで74.6億円もの大型資金調達を成功させました[7](https://newspicks.com/news/10666672/body/), [37](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。彼らは自社開発のPOSレジとモバイルオーダー、CRMを連携させることで顧客データを分析し、店舗の売上を平均で20%以上も向上させています[6](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。この成功の裏には、業界特有のオペレーションと顧客行動への深い洞察があります。
| 企業名 | 特化領域 | 提供価値と金融連携 | 直近の動向 |
|---|---|---|---|
| **hacomono** | ウェルネス | 会員管理から決済までオールインワンで提供し、人件費等の課題を解決。決済データを活用したFintech事業(融資等)へ展開[5](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22), [88](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。 | シリーズD資金調達を実施。Fintech事業拡大とM&Aに投資予定[22](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。 |
| **ダイニー** | 外食産業 | POS、モバイルオーダー、CRMを連携させ、店舗の売上を向上。決済やHR領域にもサービスを拡大[6](https://newspicks.com/news/10666672/body/), [80](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。 | 2024年9月、シリーズBで74.6億円を調達[7](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。ARRは対前年比約3倍[31](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。 |
| **エンペイ** | 保育・教育 | 集金業務のキャッシュレス化・DXを推進。バーティカルSaaSとFintechを掛け合わせ、業界の課題を解決[13](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd)。 | シリーズBで約8.5億円を調達。公共機関への導入も拡大中[19](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd), [35](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd)。 |
| **Parafin (米国)** | 中小企業向けプラットフォーム | プラットフォーマーが融資等の金融機能をAPIで簡単に実装できるインフラを提供。AmazonやDoorDashなどが導入[2](https://contents.ximera.com/ximera-media-next-trends/2025-03-05-expanded-business-areas-facilitated-by-embedded-finance)。 | 2024年12月、シリーズCで1億ドルを調達し、企業価値は7.5億ドルと評価[2](https://contents.ximera.com/ximera-media-next-trends/2025-03-05-expanded-business-areas-facilitated-by-embedded-finance)。 |
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#### 決済から始まるB2B金融のフロンティア拡大
この動きは特定の業界に留まりません。保育・教育業界では、集金業務の煩雑さを解決するエンペイ社がシリーズBで約8.5億円の資金調達を実施しました[13](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd)。同社は政府のキャッシュレス化推進を追い風に、地方自治体への導入も進めています[19](https://note.com/dnx_vc/n/ne7dd2501effd)。
さらに、一見すると金融とは遠いエネルギー業界でも、エンベデッドファイナンスの発想が取り入れられています。産業用蓄電池市場では、高額な初期投資が導入の障壁となっていますが、これを解決するために、蓄電池が生み出す経済効果(電気代削減額など)に連動して返済額が決まる「収益連動型返済モデル」や、クラウドファンディング型の資金調達モデルが提案されています[29](https://www.enegaeru.com/battery-strage-embededfinanceidea), [55](https://www.enegaeru.com/battery-strage-embededfinanceidea)。これは、物理的な資産の価値を金融商品として再定義し、中小企業でも導入しやすくする革新的なアプローチであり、B2Bエンベデッドファイナンスの応用範囲の広さを示唆しています[97](https://www.enegaeru.com/battery-strage-embededfinanceidea)。
このように、B2Bエンベデッドファイナンスとバーティカル決済の市場は、単なる決済の利便性向上を超え、各業界が抱える根深い課題を解決し、新たなビジネスモデルを創出する原動力となっています。企業は自社のプラットフォーム上で顧客の金の流れを円滑にするだけでなく、そこから得られるデータを活用して与信や融資といった新たな価値を提供し、顧客との関係を深める。この「SaaS × 金融」の相乗効果こそが、今この市場が投資家から熱い視線を集めている最大の理由と言えるでしょう。今後、この潮流はさらに多くの業界へと波及し、B2B取引の景色を大きく塗り替えていくことは間違いありません。
🖍 考察
### 調査の本質:資金調達の裏にある「B2Bビジネスの進化法則」の解明
ユーザーが求めているのは、単なる資金調達事例のリストではありません。その本質は、B2B領域、特にエンベデッドファイナンスとバーティカル決済という急成長市場において、**「どのようなビジネスモデルが成功し、なぜ投資家から評価されているのか?」** という問いへの答えです。表面的なニュースの羅列ではなく、それらの「点」の情報を繋ぎ合わせ、市場のダイナミクスという「線」と「面」を浮かび上がらせること。そして、未来の事業戦略や投資判断に資する**具体的なアクションに繋がる「知恵」**を提供することこそが、この調査が提供すべき真の価値です。
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### 分析と発見事項:SaaSは「金融」を翼に、新たな空へ
調査結果を多角的に分析すると、国内外で共通する強力なトレンドと、市場の進化を示す重要なパターンが浮かび上がります。
#### 発見事項1:国内市場の勝利の方程式は「バーティカルSaaS × 金融」
国内の成功事例(hacomono, ダイニー, エンペイ等)は、明確な共通戦略を描いています。それは、特定の業界に深く根差したバーティカルSaaSが、業務効率化という従来の価値提供に留まらず、**決済・金融機能を組み込むことで顧客の経営そのものに深くコミットする**という進化の道筋です。
- **価値提供の転換**: 単なる「コスト削減」ツールから、ダイニーのように「売上向上」に貢献するパートナーへと役割が変化しています[6](https://newspicks.com/news/10666672/body/)。
- **TAM(市場規模)の拡張**: バーティカルSaaSは市場が限定的と見られがちでしたが、金融機能を統合することで、SaaS利用料という枠を超え、「決済手数料市場」や「事業資金融資市場」という巨大なTAMにアクセス可能になります。hacomonoが年間1,500億円の決済額を基盤にFintech事業を拡大しようとしているのは、その象徴です[2](https://note.hacomono.jp/n/n3f5e5bcb8e22)。
#### 発見事項2:海外市場は「金融機能のAPI化」と「超特化」が加速
海外では、金融機能を誰もが簡単に利用できる「部品」として提供する動きが活発です。
- **金融の"as-a-Service"化**: Rainforestの「Payments-as-a-Service」[11](https://techcrunch.com/2024/06/26/rainforest-lands-20m-to-challenge-stripe-with-embedded-payments-for-saas-providers/)やCrediLinqの「Credit-as-a-Service」[3](https://www.finextra.com/newsarticle/45999/citi-joins-series-a-for-ai-powered-b2b-embedded-finance-platform-credilinq)のように、APIを通じて金融機能を組み込むインフラ層のプレイヤーが台頭しています。これにより、あらゆるSaaSがFintech企業になる土壌が整いつつあります。
- **セグメントの先鋭化**: Slashが一般的な法人ではなく「起業家」という特定のペルソナに特化したバンキングサービスを提供するように[5](https://fintech.global/2025/05/23/vertical-banking-fintech-slash-lands-41m-to-scale-tailored-business-banking/)、「業界」という切り口からさらに踏み込んだ「超特化」が進んでいます。
#### 発見事項3:AIが「与信のラストワンマイル」を解決
CrediLinqの事例が示すように、AIはB2Bエンベデッドファイナンスの進化を支える重要な鍵です[3](https://www.finextra.com/newsarticle/45999/citi-joins-series-a-for-ai-powered-b2b-embedded-finance-platform-credilinq)。SaaS上に蓄積されたリアルタイムの取引データをAIが分析することで、従来の財務諸表だけでは評価が難しかった中小企業(SME)への、迅速かつ的確な与信判断が可能になります。これは、金融サービスから取り残されがちだった事業者へのアクセスを拓く、まさに「与信の革命」です。
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### より深い分析と解釈:「なぜ?」から探る市場変化の根本原因
これらの発見事項の背後にある構造的な要因を掘り下げます。
#### なぜ今、B2Bエンベデッドファイナンスが爆発的に成長しているのか?
この現象は、単一の理由ではなく、3つの要因が複合的に絡み合った結果と解釈できます。
1. **【技術的成熟】APIエコノミーの浸透**: 金融機能を「部品」として提供・利用する技術的基盤が整い、非金融企業が金融サービスを開発・導入するコストと時間が劇的に低下しました。
2. **【SaaS市場の飽和】新たな付加価値の模索**: SaaS市場の競争が激化し、機能改善だけでは差別化が困難になりました。SaaS事業者は、顧客を強固にロックインし、LTV(顧客生涯価値)を最大化する新たな手段として「金融」に活路を見出したのです。
3. **【顧客ニーズの顕在化】中小企業の金融格差**: 伝統的な金融機関のサービスは、手続きが煩雑でスピード感に欠け、特に中小企業のニーズに応えきれていませんでした。日々の業務に寄り添うSaaSこそが、このペインを解決する理想的な存在だったのです。
#### なぜ国内と海外で戦略が異なるのか?—「深化」が「水平展開」の土壌を育む
一見、国内の「バーティカル特化型」と海外の「水平インフラ型」は異なる戦略に見えます。しかしこれは対立ではなく、市場の成熟度の違いと捉えるべきです。
| 戦略モデル | 主な市場 | 背景・理由 | 将来の展望 |
|---|---|---|---|
| **バーティカル特化型** | 日本 | 業界ごとの商慣習が根強く、まずは特定領域を深く攻略することが成功の鍵。 | 各バーティカルで成功事例が増え、データが蓄積されることで、次のステップである水平インフラの需要が生まれる。 |
| **水平インフラ型** | 米国 | 市場が広大で多様なため、水平的なプラットフォームが成立しやすい。資本力も豊富。 | バーティカルSaaSの金融機能組み込みを加速させ、エコシステム全体を成長させる。 |
この解釈に立つと、日本のhacomonoやダイニーの成功は、将来的に**日本版のRainforestやOatFiのような金融インフラプレイヤーが登場するための重要な土壌を耕している**と見ることができます。つまり、「バーティカルの深化」が、その先の「ホリゾンタルなプラットフォーム」の誕生を促すのです。
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### 戦略的示唆:次なる一手は「データシナジー」と「資産の金融化」
この分析から、具体的なアクションに繋がる戦略的な示唆を導き出します。
#### SaaS事業者への提言
1. **決済を制圧し、金融ロードマップを策定せよ**: 決済は単なる機能ではなく、顧客データという「石油」を掘り当てるための「掘削リグ」です。まず決済をサービスに組み込み、そこから得られるデータを基に、融資、B2B BNPL、保険といった次の金融サービスの展開計画を策定すべきです。
2. **「コンパウンド戦略」で価値を複利化せよ**: ダイニーの「コンパウンドSaaS」戦略[5](https://newspicks.com/news/10666672/body/)の本質は、**データシナジーによる価値の複利効果**です。CRM、POS、決済など複数のプロダクトのデータを連携させ、1+1を3以上にする仕組みを構築することで、競合に対する圧倒的な優位性を築けます。
#### 投資家への提言
1. **評価モデルをアップデートせよ**: バーティカルSaaSの評価では、既存TAMに加えて「金融機能によって拡張される潜在TAM」を重視すべきです。決済取扱高(TPV)と、そこから生まれる金融収益(テイクレート)のポテンシャルは、企業の成長性を測る極めて重要な指標となります。
2. **「未開拓バーティカル」と「インフラ層」に注目せよ**: 飲食やウェルネスに続き、建設、物流、介護といった、まだエンベデッドファイナンスが浸透していないレガシー産業には巨大な機会が眠っています。同時に、これらのバーティカルSaaSを裏で支える「金融APIプラットフォーム」も、将来の有望な投資対象です。
#### 新規事業担当者への提言
- **「物理資産の金融化」というフロンティアを探求せよ**: エネルギー業界における蓄電池の事例[29](https://www.enegaeru.com/battery-strage-embededfinanceidea)は、エンベデッドファイナンスの応用範囲がソフトウェアに留まらないことを示唆します。建設機械、製造設備、在庫商品など、あなたの業界に眠る**「価値が固定された物理資産」をデータ化し、流動性を与える**ことで、全く新しい金融サービスを創造できる可能性があります。
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### 今後の調査:未来を予測するためのネクストステップ
今回の考察をさらに深め、より精度の高い戦略を描くために、以下の追加調査を提案します。
- **B2B BNPL(後払い)市場の深掘り調査**: 企業間取引における「掛け払い」のDXは次なる巨大市場です。国内外の主要プレイヤー、ビジネスモデル、法規制を調査し、日本市場での事業機会を特定する。
- **主要バーティカルにおける「資金フロー課題」の定性分析**: 建設、物流、医療、農業といった未開拓領域を対象に、現場の担当者へのヒアリングを通じて、商慣習に根差した具体的な資金繰りのペインポイントを明らかにする。
- **金融サービス提供における法規制・ライセンス要件の整理**: SaaS事業者が貸金業や保険代理店業などを行う際の具体的な法的ハードルと、それを乗り越えるための現実的なスキーム(金融機関との提携モデルなど)を調査する。
- **「産業OS」に向けたエコシステム戦略の事例研究**: 先行するSaaS企業が、M&AやAPI連携、パートナープログラムをどのように活用して自社を中心としたエコシステムを構築しているか、その戦略と実行プロセスを詳細に分析する。
📚 参考文献
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