📜 要約
### 主題と目的
本調査の主題は、近年急速に拡大する「推し活」および「ファンエンゲージメント」市場において、フィンテック技術を活用して新たなサービスを展開するスタートアップの資金調達動向を明らかにすることです。この市場は、ファンの熱量を経済的価値に転換する「クリエイターエコノミー」の中核として、世界で1,000億ドルを超える巨大市場へと成長しています[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
本調査の目的は、以下の3点です。
1. 国内外の主要な「推し活フィンテック」スタートアップとそのサービスを特定する。
2. 各社の資金調達額、ラウンド、主要な投資家を整理し、資金の流入トレンドを分析する。
3. 注目されるビジネスモデルや主要投資家の戦略を深掘りし、市場の今後の成長性や方向性を洞察するための客観的な情報を提供すること。
これにより、クリエイターとファンの関係性を再定義し、新たな経済圏を創出しつつあるこのダイナミックな市場の現在地と未来像を浮き彫りにします。
### 回答
#### 国内外の資金調達動向:クリエイター支援とWeb3活用が両輪に
「推し活・ファンエンゲージメント」領域への投資は、国内外で活況を呈していますが、そのアプローチには特徴的な違いが見られます。国内ではクリエイターの活動基盤を支えるプラットフォームやAIによる体験向上に資金が集中する一方、海外ではNFTやブロックチェーンといったWeb3技術を活用し、ファンを「投資家」や「共創者」へと引き上げる動きが主流となっています。
##### 【国内】クリエイターエコノミーのインフラ構築とAIによる体験革新
国内市場では、クリエイターが持続的に活動するための収益基盤やファンとの関係構築を支援する「インフラ」としてのサービスに、大型の資金が集まる傾向にあります。
その筆頭が、ファンマネタイズプラットフォーム「FANME」を運営する**株式会社TORIHADA**です。同社はシリーズAで約10億円の大型調達を実施し、「クリエイターエコノミー産業の核になる」としてジャフコグループなどから高い評価を得ています[11](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html)。
また、もう一つの大きな潮流がAIの活用です。推しの分身AIと会話できるアプリ**「OSHIAI」**は、デライト・ベンチャーズから7,000万円を調達[1](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html)。投資家は「ファンと推しの関係をまったく新しい次元へと引き上げる可能性」に期待を寄せており[1](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html)、技術がファン体験を根底から変革する可能性を示唆しています。
| 企業名 | サービス概要 | 調達額・ラウンド(一部) | 主要投資家(一部) |
|---|---|---|---|
| **TORIHADA** | ファンマネタイズプラットフォーム「FANME」 | 約10億円(シリーズA)[11](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html) | ジャフコグループ、IBJ、DGりそなベンチャーズ[2](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html) |
| **OSHIAI** | AI推し活チャットアプリ「OSHIAI」 | 7,000万円(シード)[1](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html) | デライト・ベンチャーズ[14](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html) |
| **テラーノベル** | スマホ小説投稿プラットフォーム「Teller Novel」 | 6.5億円(シリーズA)[5](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000023974.html) | グロービス・キャピタル・パートナーズ、SIG[5](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000023974.html) |
| **Castee** | ソーシャルコラボレーションサービス「Castee」 | 約4億円(シリーズA)[6](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000119298.html) | ニッセイ・キャピタル、松竹ベンチャーズ[6](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000119298.html) |
| **灯白社** | クリエイター協業のプロモーション・物販開発 | 1億円超(アーリー)[8](https://thebridge.jp/2024/10/tohakusha-early2-round-funding) | GENDA Capital、ANRI、NOWファンド[13](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000074558.html) |
##### 【海外】NFT/Web3が牽引する「ファン参加型」経済圏
海外では、NFTやブロックチェーン技術を用いて、ファンが単なる消費者ではなく、運営や意思決定に関与する「共創者」となるモデルが急速に拡大しています。
特にスポーツ界での動きは活発で、インドのクリケットファン向けNFTプラットフォーム**「FanCraze」**は、Insight Partners主導で1億ドルもの巨額資金を調達しました[4](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC30CJD0Q2A330C2000000/)。これは、ファンの熱狂がNFTを介して金融資産へと転換される巨大なポテンシャルを示しています。
また、K-popスタートアップ**「Modhaus」**は、ファンがトークンを通じてアイドルの活動方針の決定に参加できるプラットフォームを開発し、シリーズAで800万ドルを調達[1](https://uptech-media.com/k-pop-startup-modhaus-raises-us8m-to-transform-fan-engagement-via-blockchain/)。日本のKDDI系ファンドも出資しており、国境を越えてこの革新的なモデルが注目されていることがわかります。
| スタートアップ名 | 対象領域 | 技術/モデル | 調達額 | 主要投資家 |
|---|---|---|---|---|
| **FanCraze**[4](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC30CJD0Q2A330C2000000/) | クリケット(インド) | NFTプラットフォーム | 1億ドル | Insight Partners |
| **Modhaus**[1](https://uptech-media.com/k-pop-startup-modhaus-raises-us8m-to-transform-fan-engagement-via-blockchain/) | K-pop | ブロックチェーン、投票権トークン | 800万ドル | Globalbrain(KDDI系) |
| **STAN**[5](https://inc42.com/buzz/esports-fan-engagement-startup-stan-bags-investment-to-ramp-up-partnerships-engagement-in-the-ecosystem/) | eスポーツ(インド) | ブロックチェーン、NFT、ゲーミフィケーション | 250万ドル | General Catalyst |
#### 注目ビジネスモデルと主要投資家の戦略
この市場の成長を牽引しているのは、革新的なビジネスモデルと、それを支える投資家の明確な戦略です。
1. **ファントークンとクリエイター金融**:
* **ファントークン**: ブロックチェーン上で発行されるデジタル資産で、ファンに投票権や限定アクセス権などを提供します。これにより、ファンは「観客」からチーム運営などに関与する「当事者」へと役割を変えます[2](https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/jebde-07-2022-0021/full/html)。
* **クリエイター向け金融サービス**: 収入の不安定さや支払いの遅延といったクリエイター特有の金融課題を解決します。SNSのエンゲージメントなどを新たな信用指標とする融資や、請求書の即時現金化といったサービスが登場しています[8](https://avanti3.com/fintech-for-creators/)。
2. **主要投資家の戦略**:
投資家は単に資金を投じるだけでなく、それぞれの強みを活かして市場創造に深く関与しています。
| 投資家 | 戦略のキーワード | 狙い(What they want) | 具体的なアクション |
|---|---|---|---|
| **SBIインベストメント** | エコシステム、育成、IP創出 | 「推し活経済圏」の構築と主導権獲得 | アクセラレータープログラム「SEA」の運営[0](https://www.sbi-investment.co.jp/news/20250324_1.html) |
| **デライト・ベンチャーズ** | 長期的視点、AI活用、非短期IPO | テクノロジーによるファン体験の革命 | AI推し活アプリ「OSHIAI」への出資[4](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html) |
| **Animoca Brands Japan** | Web3、NFT、IPグローバル展開 | Web3による「ファン参加型経済圏」の構築 | NFTローンチパッド「SORAH」、VTuber企業等への投資[5](https://animocabrands.co.jp/en/services/),[7](https://cryptorank.io/funds/animoca-brands-kk/rounds) |
これらの投資家は、金融、長期支援、Web3技術といったそれぞれの得意分野を活かし、スタートアップと共に未来のファンエンゲージメント市場を積極的に形成しようとしています。
### 結果と結論
今回の調査から、「推し活・ファンエンゲージメント」領域におけるフィンテックサービスは、世界的に極めて重要な成長分野であり、活発な投資と思考を惹きつけていることが明らかになりました。
主要な結論として、以下の3点が挙げられます。
1. **市場の進化は二極化しつつ進行**: 国内ではクリエイターの活動を支える「インフラ」とAIによる「体験深化」が、海外ではWeb3技術を用いた「ファン参加型経済圏」の構築が、それぞれ投資の大きな潮流となっています。これは各市場の特性や技術受容度を反映した結果と考えられます。
2. **ファンとクリエイターの関係性の再定義**: フィンテックは、ファンを単なる「消費者」から、クリエイターやIPの成功に直接貢献し、その恩恵を享受する「共創者」「投資家」へと変革させる中核的な役割を担っています。ファントークンやクリエイター向け金融サービスは、この新しい関係性を具現化する象徴的なビジネスモデルです。
3. **投資家は「共創者」へ**: SBI、デライト・ベンチャーズ、Animoca Brands Japanなどの主要投資家は、単なる資金提供者ではなく、自社の強みを活かして市場そのものを創造する「共創者」としての役割を強めています。彼らの戦略的な動きが、今後の市場の方向性を大きく左右することは間違いありません。
結論として、推し活フィンテック市場は、テクノロジーによってファンとクリエイターの絆を新たな経済価値へと転換させる、まさに現代のフロンティアです。今後は、AIによるパーソナライズされた体験と、Web3による分散型のファン主導経済圏が融合し、さらにダイナミックで持続可能なクリエイターエコノミーが形成されていくと予測されます。
🔍 詳細
🏷 活況を呈する「推し活」と「クリエイターエコノミー」市場の現在地
#### 活況を呈する「推し活」と「クリエイターエコノミー」市場の現在地
「推し活」や「ファンエンゲージメント」は、もはや単なる熱心なファンの個人的な活動を指す言葉ではありません。これらは今や、クリエイターやアーティスト、ブランドがファンと直接的かつ持続的な関係を築き、新たな収益源を生み出す巨大な経済圏「クリエイターエコノミー」の中核を成しています。この市場は驚異的なスピードで成長しており、世界的なクリエイターエコノミーの市場規模は1,040億ドルに達すると報告されています[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
この活況の背景には、いくつかの複合的な要因が存在します。
1. **テクノロジーの民主化**: スマートフォンの普及や高性能な編集ツールの低価格化により、誰もがクリエイターになれる時代が到来しました[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
2. **世代間の価値観の変化**: Z世代やミレニアル世代は、マスメディアが提供する画一的なコンテンツよりも、信頼できる個々のクリエイターが発信する、よりパーソナルで専門的な情報を好む傾向にあります[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
3. **パンデミックによるデジタルシフト**: 新型コロナウイルスのパンデミックは、人々のエンターテインメント消費をデジタル空間へと大きく移行させ、クリエイターとファンのオンラインでの結びつきを加速させました[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
#### 市場の構造変化:「発見」から「収益化」へ
市場の成熟に伴い、今、大きな構造変化が起きています。それは、視聴者を集める「発見プラットフォーム」から、クリエイターが直接収益を得る「収益化プラットフォーム」への価値の移行です。
従来、YouTubeやInstagramのような巨大プラットフォームは、クリエイターがファンを見つける(発見する)上で中心的な役割を担ってきました。しかし、そのビジネスモデルは主に広告収益に依存しており、トップクリエイターに富が集中する一方で、多くのクリエイターは十分な収入を得ることが困難でした。ある調査では、YouTubeで活動するクリエイターのうち、実に97.5%が米国の貧困ラインを超える収入を得られていないという衝撃的なデータも報告されています[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
この課題を解決するものとして、Patreon、Substack、そして日本国内のTORIHADAが運営する「FANME」[0](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html)のような、ファンからの直接課金(サブスクリプション、投げ銭、コンテンツ販売など)を可能にする「収益化プラットフォーム」や、クリエイターのビジネス活動を金融面から支えるフィンテックサービスが急速に台頭しています。これらのサービスは、クリエイターが仲介者を介さず、より高い収益分配率でファンから直接支援を受けられる仕組みを提供します。この流れは、一部のトップ層だけでなく、多様な「クリエイターの中間層」を育み、エコシステム全体をより豊かで持続可能なものにすると期待されています[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
#### 爆発的に増加する投資マネー
この「収益化」へのシフトは、投資家たちの強い関心を集めています。クリエイターエコノミー関連企業への資金調達額は2021年だけで17億ドル以上に達し、2025年までには約2倍の33億ドルに達すると予測されています[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。
特筆すべきは、資金が流入しているセグメントです。以下の表が示す通り、投資の成長率は「収益化プラットフォーム」と「クリエイターツール」の分野で突出しており、投資家がどこに未来の成長性を見出しているかは明らかです。
| セグメント | 2020年資金調達額 | 2026年予測資金調達額 | 2020-2026年CAGR(年平均成長率) |
|---|---|---|---|
| 発見プラットフォーム | 13億ドル | 20億ドル | 7.4% |
| **収益化プラットフォーム** | **2億ドル** | **10億ドル** | **30.8%** |
| **クリエイターツール** | **5,000万ドル** | **3億ドル** | **35.0%** |
出典: Intro-act, "Creator Economy Riding the Monetization Wave"[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)
この潮流は日本国内でも例外ではありません。2025年3月、SBIグループは「エンタメ・推し活」領域のスタートアップを対象としたアクセラレーションプログラム「SBI Entertainment Accelerator」の開始を発表しました[20](https://www.sbinvestment.co.jp/news/20250324_1.html)。これは、日本の大手金融グループがこの市場の将来性を高く評価し、次世代のユニコーン企業がここから生まれることを見越して、本格的に投資・育成に乗り出したことを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。
このように、「推し活」と「クリエイターエコノミー」は、ファンの情熱をテコにして経済的価値を創出する、まさに現代のフロンティアです。そしてその最前線では、クリエイターの持続可能な活動を支える「収益化」の仕組み、すなわちフィンテックサービスが、市場成長の鍵を握る極めて重要な役割を担っているのです。
🖍 考察
### 調査の本質:熱狂から経済圏へ - 「推し活フィンテック」の真の価値
ユーザー様の依頼は、「推し活・ファンエンゲージメント領域のフィンテックスタートアップの資金調達ニュース」の調査です。しかし、その本質は単なるニュースのリストアップではありません。これは、**ファンの「熱狂」という無形の感情エネルギーを、いかにして持続可能な「経済圏」へと転換するか**という、現代のデジタル社会における最も重要な問いの一つを探る試みです。
この調査が提供すべき真の価値は、以下の3点に集約されます。
1. **市場機会の特定**: どのビジネスモデルが投資家の注目を集め、成長の可能性を秘めているのかを明らかにすること。
2. **リスクの可視化**: 海外との比較から見える日本の市場の課題や、法規制、技術的なハードルを浮き彫りにすること。
3. **戦略的指針の提供**: 新規参入を検討する企業や、既存のクリエイター、IPホルダーが次に取るべき具体的なアクションのヒントを提示すること。
表面的な資金調達額の多寡に一喜一憂するのではなく、その背後にある投資家の戦略、市場構造の変化、そして技術革新の意味を読み解き、皆様の次なる一手につながる「航海図」を描き出すことが、この考察のゴールです。
### 分析と発見事項:「支援」の日本と「投資」の海外 - 鮮明になる市場構造の違い
調査結果を俯瞰すると、「推し活フィンテック」の潮流は、国内外で興味深い対照を示しています。これは単なる文化の違いではなく、市場の成熟度と目指す方向性の違いを明確に映し出しています。
#### 1. 地理的トレンドの比較:エコシステムの「土壌作り」と「果実の収穫」
国内市場と海外市場では、資金が流入する領域に明確な違いが見られます。
| 観点 | 日本国内市場のトレンド | 海外市場のトレンド |
|---|---|---|
| **中心的なテーマ** | **クリエイター支援・育成** | **ファンダムの金融資産化** |
| **主要プレイヤー** | TORIHADA[11](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html), OSHIAI[1](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html), foriio[12](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000145.000037238.html) | FanCraze[4](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC30CJD0Q2A330C2000000/), Modhaus[1](https://uptech-media.com/k-pop-startup-modhaus-raises-us8m-to-transform-fan-engagement-via-blockchain/), STAN[5](https://inc42.com/buzz/esports-fan-engagement-startup-stan-bags-investment-to-ramp-up-partnerships-engagement-in-the-ecosystem/) |
| **活用技術** | AI(ファンとの関係深化), プラットフォーム技術 | NFT/ブロックチェーン(所有権、投票権) |
| **資金の使途** | クリエイターの収益化基盤、ファンコミュニティ構築 | デジタルコレクティブル、ファントークン発行 |
| **投資家の視点** | クリエイターエコシステムのインフラ整備 | 巨大ファンダムの熱量を金融商品へ転換 |
この違いは、日本市場がクリエイターエコノミーの**「土壌作り」**の段階にあることを示唆しています。TORIHADAの「FANME」[2](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html)やCastee[6](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000119298.html)のように、まずはクリエイターが活動を継続できる基本的な収益基盤やコラボレーションの場を整えることに投資が集まっています。
一方、海外では、クリケット[4](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC30CJD0Q2A330C2000000/)やK-pop[1](https://uptech-media.com/k-pop-startup-modhaus-raises-us8m-to-transform-fan-engagement-via-blockchain/)といった巨大なグローバルファンダムが既に存在しており、その熱量をNFTやファントークンという形で金融資産化し、**「果実を収穫する」**フェーズに入っていると言えます。
#### 2. 意外な発見:AIが担う「感情的」エンゲージメント
フィンテックというと合理的な金融取引のイメージが強いですが、国内の注目事例である「OSHIAI」[1](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html)は、AIチャットという**極めて感情的なコミュニケーション**に焦点を当てています。これは、「いつでも推しと繋がっていたい」というファンの根源的な欲求に応えるものであり、エンゲージメントを金融(課金)に繋げる新たなアプローチとして非常に興味深い発見です。デライト・ベンチャーズが「感情を伴った深いコミュニケーション」に投資している点は[5](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000155819.html)、この市場が単なる決済インフラではなく、**感情価値の創造**が鍵であることを示しています。
#### 3. 主要投資家の異なるアプローチ
調査結果から浮かび上がる主要投資家の戦略は、三者三様であり、市場の多面性を物語っています。
* **SBIインベストメント**: 「育成」を重視し、アクセラレータープログラムを通じて日本の推し活エコシステム全体を創造しようとしています[0](https://www.sbi-investment.co.jp/news/20250324_1.html)。金融グループとしての強みを活かし、未来の市場インフラを自ら作り上げる壮大な狙いが見えます。
* **デライト・ベンチャーズ**: 「非短期IPO」という長期的な視点で、AIのような破壊的技術を用いた「ゲームチェンジャー」の創出を目指しています[2](https://medium.com/tokyo-fintech/delight-ventures-investment-policy-1cc65929f5ed)。
* **Animoca Brands Japan**: 「Web3 × 日本のIP」という明確な戦略の下、NFTやトークンを用いてファンを「共創者」へと変えるグローバルな経済圏構築に注力しています[5](https://animocabrands.co.jp/en/services/)。
これらの動きは、この市場が単一の正解を持たず、多様なアプローチで成長していく可能性を示唆しています。
### より深い分析と解釈:なぜ日本は「支援」、海外は「投資」なのか?
この顕著な違いの背景には、より根深い構造的な要因が存在します。ここでは「なぜ?」を3段階掘り下げ、その本質を探ります。
**【第1階層】なぜ、投資の焦点が異なるのか?**
→ 国内では個人のクリエイターが活動を始めたばかりの黎明期であり、まず持続可能な活動基盤を整える必要があります。一方、海外では既に巨大なIPやスポーツリーグが存在し、その熱量を収益化する段階にあります。
**【第2階層】なぜ、国内は「個」、海外は「巨大IP」が中心なのか?**
→ 日本のクリエイターエコノミーは、YouTubeやTikTokなど、個人が起点となるプラットフォームから発展してきた背景が強いです。そのため、個々のクリエイターの「生活」を支えるニーズが先行します。一方、海外では伝統的なプロスポーツや大手エンタメ企業がWeb3技術を積極的に採用し、トップダウンで市場を牽引しています。
**【第3階層】なぜ、そのような市場構造の違いが生まれたのか?**
→ 以下の3つの複合的な要因が考えられます。
1. **金融リテラシーと法規制の壁**: 海外、特に米国では株式投資が一般的であり、JOBS Act[0](https://medium.com/@michaelgolomb/invest-with-heart-how-fanvestor-is-leveling-the-playing-field-for-entertainment-and-sports-8f075d936733)のような規制緩和がファンによる直接投資を後押ししました。一方、日本ではファントークンなどが金融商品と見なされる可能性があり、法的なハードルが高いです。これが、投機的な側面を持つNFTよりも、より直接的な「支援」モデルが好まれる一因となっている可能性があります。
2. **ファンダムの性質の違い**: 日本の「推し活」文化は、対象への「貢献」や「応援」といった無償の愛に近い感情が強い傾向にあります。これに対し、海外のスポーツファンダムなどでは、ファンタジースポーツのように、応援とギャンブルや投資が地続きになっている文化土壌があります。この文化の違いが、ビジネスモデルの受容性に影響を与えています。
3. **「クリエイターの中間層」の不在という課題**: 調査結果にあるように、一部のトップクリエイターに富が集中し、大多数は十分な収入を得られていないのが世界の現実です[3](https://www.intro-act.com/uploads/primer/Creator%20Economy_Riding%20the%20Monetization%20Wave_033022.pdf)。日本で「支援プラットフォーム」に資金が集まるのは、この**「クリエイターの中間層(the creator middle class)」**を育てなければ、エコシステム自体が崩壊するという危機感の表れとも解釈できます。
この分析から導き出される本質は、**日本の市場は「クリエイターの生存基盤の確立」という社会課題解決の側面が強く、海外は「既存の巨大な熱量の金融化」という純粋なビジネス機会追及の側面が強い**という構造的な違いです。
### 戦略的示唆:日本の「推し活フィンテック」が次に進むべき道
この深い分析に基づき、具体的かつ実践的な戦略的示唆を提示します。
#### 1. 新規参入者への提案:「クリエイター向け金融サービス」というブルーオーシャン
現在の国内市場は、クリエイターの「表舞台」であるコンテンツ配信やファンコミュニティ機能に注目が集まっています。しかし、真の課題は**「バックエンド」**にあります。
* **具体的なアクション**:
* **クリエイター向けファクタリング**: ブランド案件などの報酬を即座に現金化するサービス。
* **ソーシャルデータ与信**: YouTubeの再生回数やチャンネル登録者数、SNSのエンゲージメント率などを基に与信枠を設定し、小口融資やクレジットカードを提供する。海外では既に事例があります[8](https://avanti3.com/fintech-for-creators/)。
* **B2B2Cモデル**: TORIHADAの「FANME」[2](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000030350.html)のようなプラットフォームと提携し、彼らの抱えるクリエイター向けに金融機能をAPIで提供する。
これらのサービスは、クリエイターが創作活動に専念できる環境を整える上で不可欠であり、国内ではまだ競合が少ないブルーオーシャン市場と言えます。
#### 2. 既存事業者への提案:Web3とAIによるエンゲージメントの進化
* **クリエイター支援プラットフォーム事業者(TORIHADAなど)へ**:
* 現在のマネタイズ機能に加え、**AIチャット機能(OSHIAIモデル)**を導入し、ファンとの新たな接点を創出する。
* **簡易な確定申告支援ツール**など、クリエイターのバックエンド業務を支援する機能を統合し、プラットフォームのロックイン効果を高める。
* **IPホルダー(出版社、アニメ制作会社、芸能事務所など)へ**:
* **「日本版ファントークン」の模索**: 海外のModhaus[1](https://uptech-media.com/k-pop-startup-modhaus-raises-us8m-to-transform-fan-engagement-via-blockchain/)を参考に、まずは金融商品と見なされない範囲で、**限定コンテンツの閲覧権やイベントの投票権**をNFTとして発行する。これにより、ファンを「共創者」として巻き込み、IPへのロイヤリティを飛躍的に高めることができます。Animoca Brands Japan[5](https://animocabrands.co.jp/en/services/)のような専門家と連携することが成功の鍵となります。
#### 3. 投資家への提案:長期視点での「インフラ」投資
短期的なリターンが見込めるアプリやサービスも魅力的ですが、この市場の真の価値は、クリエイターエコノミーを支える**「インフラ」**にあります。SBI[0](https://www.sbi-investment.co.jp/news/20250324_1.html)やデライト・ベンチャーズ[2](https://medium.com/tokyo-fintech/delight-ventures-investment-policy-1cc65929f5ed)のように、長期的な視点で市場そのものを育てる戦略が、最終的に大きなリターンを生む可能性があります。特に、前述の「クリエイター向け金融サービス」や、Web3関連の法規制に対応する「リーガルテック」などは、将来の成長が見込める重要な投資領域です。
### 今後の調査:「感情の経済化」の未来を探るために
今回の分析は、活況を呈する「推し活フィンテック」市場の現在地を明らかにしましたが、同時に新たな問いも生み出しました。この市場の持続的な成長を確かなものにするため、以下のテーマに関する継続的な調査を提案します。
* ファントークンの法的・税務的論点の整理
* クリエイター向けソーシャルデータ与信モデルの構築
* AIによるファンエンゲージメントの倫理的課題
* Z世代の金融行動と「推し活」の関連性分析
📚 参考文献
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