📜 要約
### 主題と目的の要約
本調査レポートは、オープンイノベーション市場の過去と現在、そして今後の展望について詳しくまとめたものです。オープンイノベーションの必要性が高まる背景、導入における課題、日本企業の取り組み状況、成功・失敗事例の分析を通して、オープンイノベーションの重要性と戦略的なアプローチについて明らかにすることを目的としています。
### 主要な内容と発見
オープンイノベーションの必要性は、多様化する顧客ニーズへの対応、生産サイクルの短期化、時間的・人的コストの抑制などが挙げられます。一方で、経営層の理解不足、組織体制の整備、セキュリティ面での対策が課題として指摘されています。
日本企業は自前主義から脱却できておらず、オープンイノベーションの重要性を認識しつつ、積極的な取り組みが求められています。欧米企業では1980年代以降、制度整備の進展により垂直分化が進み、日本の「系列」システムを参考にした動きも見られます。
オープンイノベーションの成功事例としては、ソフトバンクの「ONE SHIP」プログラムや日立製作所のグローバルなイノベーション協創センターが挙げられます。一方、失敗事例としては、Apple のアップルニュートンやGoogle のGoogle Glassなどが指摘されています。
### 結果と結論のまとめ
オープンイノベーションは、複雑化する社会課題への対応や補完財の開発において重要な役割を果たしています。日本企業はコアコンピタンスの明確化と補完財のオープンイノベーション戦略の立案が重要です。また、基礎研究と開発研究の分業体制の整備やスピンアウト・スピンオフの促進など、オープンイノベーションを支える体制づくりが日本全体で必要とされています。
成功事例からは、戦略的な目的設定、DX化との並行、専任担当者の配置が重要であり、失敗事例からは、価格の高さ、機能の不便さ、市場ニーズとのミスマッチが課題であることが明らかになりました。
オープンイノベーションの推進には、これらの成功要因と失敗要因を踏まえ、戦略的かつ組織的なアプローチが不可欠です。
🔍 詳細
🏷 イノベーションの歴史的背景と日本の課題
#### イノベーションの歴史的背景と日本の課題
オープンイノベーションの必要性が高まる理由は、多様化する顧客ニーズへの対応、生産サイクルの短期化への対応、時間的・人的コストの抑制が挙げられる。一方、導入の課題としては、経営層の理解不足、組織体制の整備、セキュリティ面での対策が挙げられる。日本企業は自前主義から脱却できておらず、オープンイノベーションの重要性を認識し、積極的な取り組みが求められている。
#### オープンイノベーションの必要性が高い理由とは?導入の課題も解説
近年、技術の進化が早く、新しい商品やサービスが次々と生み出されています。生産サイクルの短期化により競争が激化し、これまで市場で高いシェアを獲得していた企業も、そのままの状態を維持できるとは限りません。
オープンイノベーションの必要性が高まっている主な理由は以下の3点です:
1. **多様化する顧客ニーズに応える**
- インターネットの普及で消費者は自由に情報を取得できるようになり、ネットショッピングの利用も増えています。市場は変化し、顧客ニーズは多様化・複雑化しています。
- 変化する顧客ニーズに対応するには、従来の経営戦略では追いつけません。オープンイノベーションは多様化する顧客ニーズに応えたい企業にとって、迅速に取り組むべき課題となっています。
2. **生産サイクルの短期化に対応する**
- 競合他社と差別化して優位に立つためには、開発から製品化までのスピードを速めることが必要です。
- そのためには、新しい技術やアイデアを外部から取り入れるオープンイノベーションを推進していかなければなりません。
3. **時間的・人的コストを抑える**
- 企画から開発、製品化までをすべて内部のリソースのみで進めると、多くの人的コストと時間が必要です。
- 生産サイクルの短期化に対応していくためには、短期間でコストを抑える手法が求められます。外部の技術を取り入れるオープンイノベーションにより、時間的・人的コストを抑えることが重要です。
一方で、オープンイノベーションを導入する際の課題もあります。経営層の理解不足、組織体制の整備、セキュリティ面での対策などが重要です。
日本企業の多くは未だ自前主義から脱却できていませんが、経済産業省はオープンイノベーションを推進するための様々な施策を打ち出しています。顧客ニーズの変化に迅速に対応し、競争力を維持するためには、オープンイノベーションの必要性を把握し、積極的に取り組むことが不可欠です。
#### オープンイノベーションを創出する3つの手法
オープンイノベーションには大きく分けて3つの手法があります:
1. **インバウンド型**
- 外部から知識や技術を取り入れてイノベーションを行う手法です。ライセンスインや産学連携などが例として挙げられます。
2. **アウトバウンド型**
- 自社が保有している技術などを外部に提供することで、新たな開発や製品化につなげる手法です。コラボレーションによる共同開発やスピンオフなどがあります。
3. **連携型**
- インバウンド型とアウトバウンド型の両方を統合したオープンイノベーションです。アイデアソン・ハッカソンの開催、ジョイントベンチャーの設立、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)、インキュベーターなどが例として挙げられます。
必要性に応じて、自社に合う方法で取り組むことが重要です。
#### オープンイノベーションの成功例
オープンイノベーションに積極的に取り組む企業の成功例として、以下の2社を紹介します:
1. **味の素**
- 国内外の企業や研究機関とリンクするオープン&リンクイノベーションの活動を推進しています。
- 2021年には「食と健康の課題解決」を実現する新しい事業モデルの構築を目的に、共創プロジェクトを開始しています。
2. **日産自動車**
- 自前主義から脱却し、ベンチャー企業との協業を積極的に行っています。
- ベンチャーの「領域は広くないものの非常に深い技術力」に着目し、自社では時間を割けない領域を取り入れることで、新しい価値の創造を目指しています。
これらの事例から、オープンイノベーションを成功させるためのヒントが得られます。








#### イノベーションの歴史的背景と日本の課題
19世紀後半から20世紀のアメリカでは、経済成長のスピードが速く、制度整備が追いつかず、取引コストが高かったため、企業は垂直統合型の組織を採用していた。1980年代以降、制度整備が進み、取引コストが低下したことで、企業は垂直分化を進めるようになった。日本企業の「系列」システムが注目され、欧米企業もそれを参考にして垂直統合を改めた。オープン・イノベーションは、この系列を一歩進めて外部を探索する動きと位置づけられる。
日本におけるオープン・イノベーションの課題は、社会課題が複雑化しており、既存事業だけでは解決が難しくなっている。そのためオープン・イノベーションによるステークホルダーとの協業が重要になっている。補完財の開発が追いつかず、それをオープン・イノベーションで行うケースが増えている。日本企業はコアコンピタンスを明確にし、補完財のオープン・イノベーション戦略を立てることが重要。日本全体でも、基礎研究と開発研究の分業体制の整備やスピンアウト・スピンオフの促進など、オープン・イノベーションを支える体制づくりが必要。
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#### オープンイノベーションの重要性と変遷
このような取組事例を背景に、これまで研究開発寄りだったオープンイノベーションの議論が、企業の中長期戦略・持続的成長に則して外部連携を活用した新事業・新市場創出の枠で捉えられるようになっています。事業のサービス化が加速する中、オープンイノベーションの対象も研究開発から商用化、ビジネスモデル、最終的にサービス領域へと拡大してきました。
#### クローズドイノベーションの限界
オープンイノベーションが重視されるようになった理由として、まずは既存のクローズドイノベーションが限界に達したことがあげられます。1980~1990年代、欧米企業を中心にイノベーションの先進事例は、自社内の経営資源や研究開発に依存した「自前主義」体制から生まれました。しかし、1990年代以降、日本における研究開発効率は急速に低下し、クローズドな環境によるイノベーションは限界を迎えることとなりました。
#### オープンイノベーションの重要性
こうしたクローズドイノベーションの限界が認識される中で、2003年、当時米ハーバード大学経営大学院の教員であったヘンリー・チェスブロウが発表した『Open Innovation -The New Imperative for Creating and Profiting from Technology』によって、「オープンイノベーション」の概念が注目されることとなりました。チェスブロウは、組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことを「オープンイノベーション」と定義しました。
#### オープンイノベーションの変遷
オープンイノベーションの定義が初めて発表されて以降、オープンイノベーションが適用される範囲や手法も変化を遂げてきました。研究開発から新事業創出のオープンイノベーションへ、そしてオープンイノベーション創出方法の多様化が進んでいます。近年では、大企業とベンチャー企業間の協業・連携が急速に増えており、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)の創設やベンチャー企業を支援するインキュベーション施設、アクセラレータープログラムの設置などが行われています。
#### 日本におけるオープンイノベーション
日本でも1990年代後半から産学官連携等の文脈でオープンイノベーションが推進されてきました。近年では、大企業がベンチャー企業との連携を通じた新事業創出や新商品開発に取り組むようになっています。政府も「日本再興戦略」などでオープンイノベーションの推進を掲げており、ベンチャー企業の創出や大企業におけるさらなるイノベーション促進に取り組んでいます。
#### イノベーションの歴史
- 経営資源の組み合わせの仕方が、垂直統合型からネットワーク型へと変化してきた。これは「オープン・イノベーション」と呼ばれている([Chesbrough, 2003](https://hbr.org/product/open-innovation-the-new-imperative-for-creating-and-profiting-from-technology/8377-HBK-ENG))。
- 初期のイノベーションは、ハーグリーブスのジェニーやワイアットのスピニング・ジェニーなどの発明品によって促進された。これらの発明品は大きなインパクトを与え、産業革命を加速させた。
- 19世紀以降は、大規模な組織が重要になってきた。大規模な組織は、物流、安全性への対応などが必要となり、多機能組織(multi-functional organization)が成立した([Chandler Jr, 1977](http://www.hup.harvard.edu/catalog.php?isbn=9780674940529))。
- 1980年代半ばから、特にアメリカのシリコンバレーを中心に、スタートアップによるイノベーションが活発化した。これは、外部のリソースを活用することで、より効率的にイノベーションを生み出せるようになったためである([Chesbrough, 2003](https://hbr.org/product/open-innovation-the-new-imperative-for-creating-and-profiting-from-technology/8377-HBK-ENG))。
#### 参考文献
- [Chandler Jr, A. D. (1977). The Visible Hand: The Managerial Revolution in American Business.](http://www.hup.harvard.edu/catalog.php?isbn=9780674940529)
- [Chesbrough, H. W. (2003). Open Innovation: The New Imperative for Creating and Profiting from Technology.](https://hbr.org/product/open-innovation-the-new-imperative-for-creating-and-profiting-from-technology/8377-HBK-ENG)
- [Penrose, E. T. (1980). The Theory of the Growth of the Firm.](https://trove.nla.gov.au/work/9812420?q&sort=holdings+desc&_=1533604862789&versionId=45118806)
- [Rosenberg, N. (1979). Technological Interdependence in the American Economy.](http://www.jstor.org/stable/3103110?seq=1#page_scan_tab_contents)
- [センター (2017). イノベーションマネジメント入門.](https://www.nikkeibook.com/book/79114)
#### オープン・イノベーションの歴史的背景と日本の課題
オープン・イノベーションには以下のような歴史的背景があります:
- 19世紀後半から20世紀のアメリカでは、経済成長のスピードが速く、制度整備が追いつかず、取引コストが高かったため、企業は垂直統合型の組織を採用していた。
- 1980年代以降、制度整備が進み、取引コストが低下したことで、企業は垂直分化を進めるようになった。
- 日本企業の「系列」システムが注目され、欧米企業もそれを参考にして垂直統合を改めた。
- オープン・イノベーションは、この系列を一歩進めて外部を探索する動きと位置づけられる。
一方、日本におけるオープン・イノベーションの課題は以下の通りです:
- 社会課題が複雑化しており、既存事業だけでは解決が難しくなっている。そのためオープン・イノベーションによるステークホルダーとの協業が重要になっている。
- 補完財の開発が追いつかず、それをオープン・イノベーションで行うケースが増えている。
- 日本企業はコアコンピタンスを明確にし、補完財のオープン・イノベーション戦略を立てることが重要。
- 日本全体でも、基礎研究と開発研究の分業体制の整備やスピンアウト・スピンオフの促進など、オープン・イノベーションを支える体制づくりが必要。

#### 日本とアメリカの研究開発費の割合の推移

#### 第4次産業革命とオープンイノベーション
総務省の平成29年版情報通信白書では、第4次産業革命を社会経済に顕在化させるためには、イノベーションの促進と新たな財・サービスの創出が重要であると指摘されています。特に、企業の枠を超えた新規事業開発やオープンイノベーションの推進が期待されています。
ベンチャー企業は、機動的な意思決定と迅速・大胆な挑戦が可能であるため
🖍 考察
### 調査の結果
オープンイノベーション市場については、以下のような状況が確認できました。
- 顧客ニーズの多様化、生産サイクルの短期化、時間的・人的コストの抑制などの理由から、オープンイノベーションの必要性が高まっている。
- 一方で、経営層の理解不足、組織体制の整備、セキュリティ面での対策などが導入の課題となっている。
- 日本企業は自前主義から脱却できておらず、オープンイノベーションの重要性を認識し、積極的な取り組みが求められている。
- 大企業やIT企業を中心に、共同研究、DX推進、AI・VRの活用など、様々な取り組みが行われている。
### 推定
オープンイノベーション市場の課題と今後の展望については、以下のように推定できます。
- 日本企業の自前主義からの脱却が課題
- 企業間の垂直統合から垂直分化への移行が進む中、日本企業は系列システムにとらわれがちである
- 社会課題の複雑化に伴い、既存事業だけでは解決が難しくなっているため、ステークホルダーとの協業が重要
- オープンイノベーションを支える体制づくりが必要
- 基礎研究と開発研究の分業体制の整備
- スピンアウト・スピンオフの促進
- 戦略的な目的設定、DX化との並行、専任担当者の配置などが重要
### 分析
オープンイノベーション市場の現状と課題、今後の展望を総合的に分析すると、以下の点が考えられます。
- 日本企業がオープンイノベーションの重要性を認識しつつも、自前主義からの脱却が十分ではない
- 社会課題の複雑化に対応するためには、ステークホルダーとの協業が不可欠
- 企業間の垂直分化が進む中、日本企業の系列システムが障壁となっている
- オープンイノベーションを推進するための体制づくりが課題
- 基礎研究と開発研究の分業体制の整備
- スピンアウト・スピンオフの促進
- 戦略的な目的設定、DX化との並行、専任担当者の配置など、成功事例から学ぶべき点がある
- 大企業やIT企業を中心に、様々な取り組みが行われているが、まだ発展途上の段階
- 医薬品、機械、食品、素材・化学など、各業界で特徴的な取り組みが見られる
- 今後は、これらの取り組みから得られた知見を活かし、オープンイノベーションの更なる推進が期待される
### 今後の調査
オープンイノベーション市場の更なる理解と発展のために、以下のような調査テーマが考えられます。
- 日本企業のオープンイノベーション導入における課題と成功要因の分析
- 基礎研究と開発研究の分業体制の整備に向けた具体的な方策の検討
- スピンアウト・スピンオフの促進に向けた支援策の調査
- 業界別のオープンイノベーション事例の深掘りと横展開の可能性
- オープンイノベーションとDX化の連携に関する事例研究
📚 参考文献
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